2場所連続の優勝を果たした新大関・安青錦(安治川)は、初場所終盤戦の幕内土俵入りのほとんどを、1980年代の米国美術史を代表する芸術家、キース・へリングの作品が描かれた化粧まわしをつけて上がった。化粧まわしは安治川部屋の後援会長を務め、昨年12月に亡くなった中村和男さんから贈られたもの。

1つしか化粧まわしを持っていくことができなかった昨年10月のロンドン公演でも着用したお気に入りだ。

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 化粧まわしの絵柄は、1985年にジュネーブで開催されたサミットのために作られた作品。平和を連想させるような絵が描かれているが、中村さんが館長を務めていた中村キース・ヘリング美術館の学芸員・田中今子さんは「キース・ヘリングの場合は、作品に具体的にタイトルや意味を持っておらず、鑑賞者に委ねているという思考で、作品の多くが無題です。図像から地球を上に持ち上げて、称賛しているような図柄で、見る方のどのような作品なのかを考えてもらえれば」と話す。

 安青錦は化粧まわしが贈られたことを機にキース・ヘリングに興味を持つようになった。昨年6月13日には同館に来場。「相撲だけでなくて、人間として成長したいと思った。相撲から離れて、いろいろなところで活躍をしている人を見て成長できる」。同年3月春場所の新入幕の前には、師匠の安治川親方とともに茨城・水戸市で行われていたキース・へリング展へ。間近で作品を目にし「そこまで自分は詳しくないが、すごいと思った。誰が見てもキース・へリングの作品だと分かる。やっているだけで安青錦だと見て分かる相撲を取りたい」と、思いを強くしていた。

信念を胸に駆け抜けた新入幕から約1年、天国の中村さんに届ける20年ぶりの新大関優勝を果たした。頭を下げた前傾姿勢の相撲は、誰が見ても安青錦の相撲だと分かるほどの代名詞になった。(大西 健太)

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