東京映画記者会(スポーツ報知など在京スポーツ紙7社で構成)が選ぶ「第68回(2025年度)ブルーリボン賞」が27日、決まった。「宝島」(大友啓史監督)の妻夫木聡(45)が15年ぶり2度目の主演男優賞に輝いた。

主演女優賞は「ゆきてかへらぬ」(根岸吉太郎監督)などで広瀬すず(27)が初受賞。「TOKYOタクシー」の山田洋次監督は48年ぶり3度目の監督賞を獲得した。授賞式は2月17日に都内で開催される。

 15年前、「悪人」(李相日監督)で初受賞した時のことを聞かれると、妻夫木は目頭を抑え涙をこぼした。

 「思い出すと、泣いちゃうな…。ブルーリボンは二人三脚でやってきたマネジャーが『本当に名誉な賞だから』って喜んでくれた。一緒にもらった賞というか。自分の喜びより、感謝が強くなっちゃって」。15年ぶりの栄冠についても、「みんなでもらった賞」と周囲への感謝を何度も口にした。

 「宝島」は、米国統治下時代沖縄を舞台に、戦争に翻弄(ほんろう)された人々を描いた3時間超の大作。妻夫木は実在した窃盗団「戦果アギヤー」の一員で、後に刑事になる主人公を熱演した。

 06年、同じく沖縄を舞台にした「涙そうそう」に出演したのを機に、現地に多くの友人がいる。

その友人と嘉手納基地近くのカフェに入った時、話せないほどの戦闘機の爆音を聞いた。「妻夫木、これが沖縄よ」。この一言に衝撃を受けた。「ここに住んでいる人たちは、毎日戦争って匂いを感じて暮らしている。前から僕は何かやり残したことがあると思っていた。今回、出演の話があった時は運命を感じました」。

 撮影はコロナ禍により2度延期。予算的にも「本当に綱渡り。監督と心中する気持ちでした」という状況を乗り越えての完成だった。

 「確実に僕たちが知ってなきゃいけないことがある。少しでも関心を持ってくれたら、何か世の中が変わっていく最初の一歩になる。『宝島』はそういう作品になれている気がする。

希望への橋渡し的な存在になっていると思った。自分の存在を投げ捨ててまで背負わなきゃいけない」。いち出演者としの枠を超えて宣伝活動にも奔走した。約1万5000キロを駆け、81の劇場で舞台あいさつし、464人の劇場スタッフと写真撮影。宣伝用に用意した名刺を配った人数は5386人にも及んだ。「映画の存在を超えて関われた」作品となった。

 今年度の映画賞レースは「国宝」(李相日監督)が、主演男優賞も同作の吉沢亮(31)が席巻している。「僕も当然見ました。見る前、特報出しで吉沢君が屋上にいる場面を見てすぐ李さんに『これは、国宝勝ちだね』って連絡した。評価されるべきすごい作品」とたたえ、「今年は吉沢君の年になるって思っていたので、僕が個人の賞をもらえるなんて想像してなかった。だからやっぱり、みんなでもらった賞ですね」と続けた。

 今後について聞くと「初心忘れるべからず。

ただ、感謝は当たり前。必要なのは覚悟なんじゃないかなとずっと思ってます。自分はどこまで捨てられるのか、追い込めるのか―」。そう言ったが、1時間を超えて発した言葉のひとつひとつに、映画界を引っ張っていく俳優としての覚悟は、すでに備わっていた。(土屋 孝裕)

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