東京映画記者会(スポーツ報知など在京スポーツ紙7社で構成)が選ぶ「第68回(2025年度)ブルーリボン賞」が27日に決まった。邦画実写の歴代興収記録を22年ぶりに更新した「国宝」(李相日監督)が作品賞に選ばれた。

 李監督にとっては2006年度の「フラガール」以来、19年ぶりの作品賞。「約20年、取れていなかったんです。目の肥えた記者の皆さんのシビアな視点で選ばれる賞。難しいんだなと改めて思いました」と感慨深げに語った。監督人生で10本目の長編映画。「20本、30本やって、初めて映画監督として流れを作れる。まだまだ途上です」と足元を見つめた。

 歴史的な大ヒットにも浮かれた様子はない。「歌舞伎という題材に相当、高いポテンシャルがあった。ただ歴史が長いだけでなく、継承されている意義があって、存続している。日本人にとって自分たちの宝を掘り起こしたような、目覚めのような発見があったのでは」。さらに「興収記録の上位はアニメや派手なアクション映画に絞られていた。

でも、この作品のように美しさ、人間ドラマ、文芸作品でも映画館で見て、浴びるような体験ができると気づいてもらえた」とヒットの背景を分析した。

 吉沢亮(31)、横浜流星(29)らが未経験から1年半ほどの稽古で歌舞伎を習得した。監督としても葛藤の連続だった。「根拠のない衝動から映画を作り始めて、正解を知っているわけじゃない。常に『これでいいんだろうか?』と葛藤しないことはないですね」。歌舞伎指導として撮影に携わった中村鴈治郎(66)に感謝しつつ「歌舞伎俳優じゃない人間が演じることを否定的に取られる可能性もあった鴈治郎さんの顔に泥を塗ってはいけないと心配でした」と振り返った。

 興収は昨年6月6日から今月25日までの234日間で195億5826万500円で200億円の大台も目前となった。(有野 博幸)

 ◆李 相日(り・さんいる)1974年1月6日、新潟県生まれ。52歳。大学卒業後、日本映画学校で学び、卒業制作の「青 chong」が2000年のぴあフィルムフェスティバルでグランプリなど4部門を受賞してデビュー。06年の「フラガール」で日本アカデミー賞最優秀作品賞、報知映画賞作品賞など。ほかに「悪人」(10年)、「許されざる者」(13年)、「怒り」(16年)など。

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