東京映画記者会(スポーツ報知など在京スポーツ紙7社で構成)が選ぶ「第68回(2025年度)ブルーリボン賞」の主演男優賞に27日、「宝島」(大友啓史監督)の妻夫木聡(45)が輝いた。第53回(2010年度)以来15年ぶり2度目となる。

 「うれしい。でも僕個人でもらった気が全然しなくて…みんなでもらった賞だよねっていう感じ」。そういって、妻夫木は照れ笑いした。

 今年度の映画賞レースは「国宝」(李相日監督)が、主演男優賞も同作の吉沢亮が席巻している。「僕も『国宝』は当然見ました。試写会で見た時、いや、それ以前かな、特報出しで吉沢亮くんが屋上にいる場面を見て、あれは吉沢亮じゃない、役に憑依(ひょうい)したなって分かった。すぐ李さんに連絡して『これは、国宝勝ちだね』って連絡しました。評価されるべきすごい作品」とたたえた。そして「今年は吉沢くんの年になるって思っていたので、僕が個人の賞をもらえるなんて想像してなかった。だからやっぱり、みんなでもらった賞ですね」と続けた。

 15年前に主演男優賞を受賞した際の対象作「悪人」、や「怒り」などでタッグを組んだ李監督とは「戦友」の仲だ。「宝島」、「国宝」はともに脚本、予算面で難航した時期など共通点もあり、何度も連絡をとりあって情報交換したという。

 妻夫木は「2人で飯を食って、そっちはどうよ、こっちはああだよ、ってお互いでやり取りして。大体(撮影の)終わりも同じような時期で。同じ作品ではないけれど、日本映画界で一緒に戦っている感じというのはすごくうれしかった」と振り返った。

 「宝島」は、米国統治下時代沖縄を舞台に、戦争に翻弄(ほんろう)された人々を描いた3時間超の大作。妻夫木は実在した窃盗団「戦果アギヤー」の一員で、後に刑事になる主人公を熱演した。

 06年、同じく沖縄を舞台にした「涙そうそう」に出演したのを機に、現地に多くの友人がいる。その友人と嘉手納基地近くのカフェに入った時、話せないほどの戦闘機の爆音を聞いた。「妻夫木、これが沖縄よ」。この一言に衝撃を受けた。「ここに住んでいる人たちは、毎日戦争って匂いを感じて暮らしている。前から僕は何かやり残したことがあると思っていた。今回、出演の話があった時は運命を感じました」。

 撮影はコロナ禍により2度延期。予算的にも「本当に綱渡り。監督と心中する気持ちでした」という状況を乗り越えての完成だった。

 「確実に僕たちが知ってなきゃいけないことがある。少しでも関心を持ってくれたら、何か世の中が変わっていく最初の一歩になる。『宝島』はそういう作品になれている気がする。希望への橋渡し的な存在になっていると思った。自分の存在を投げ捨ててまで背負わなきゃいけない」。いち出演者としの枠を超えて宣伝活動にも奔走した。約1万5000キロを駆け、81の劇場で舞台あいさつし、464人の劇場スタッフと写真撮影。宣伝用に用意した名刺を配った人数は5386人にも及んだ。「映画の存在を超えて関われた」作品となった。

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