前田日明vsアンドレ・ザ・ジャイアントなどプロレスのリングで起きた不穏試合を掘り起こす「証言 プロレス界ケンカマッチの真実」(税込1980円)が29日、宝島社から発売された。佐山聡、藤原喜明、川田利明、船木誠勝が著者に名を連ね、256ページにわたって検証している。

 ケンカマッチと言えば、アントニオ猪木の新日本プロレスから前田日明とUWF系団体へと受け継がれた”お家芸”。猪木がパキスタンに乗り込み英雄の腕を折ったアクラム・ペールワン戦、顔面を蹴って3分でKOしたグレート・アントニオ戦、前田はアンドレとの不穏試合のほか、長州力の顔面を蹴って骨折させた6人タッグ戦などが伝説となっている。

 1986年4月29日に三重・津市体育館で起きた前田とアンドレの不穏試合は、藤原が至近距離の目撃者だ。「アンドレが仕掛けてきているのはわかったからな、前田に『やられる前にやれ!』と言ったんだよ」と証言する。「ヒザを正面から蹴れ!」との藤原のアドバイスを受けた前田が何発も打ち込むと、アンドレはリングに大の字になって戦意喪失。世界の大巨人という”金看板”を傷つけないように裁定は無効試合となり、予定されていた録画中継はお蔵入りになった。

 「プロレスラーは自分の身は自分で守ることが基本。他に誰も守ってくれねえよ。国と国だってそうだろ。日本をアメリカが守ってくれると思ったら大間違い」と猪木の弟子で前田の師匠の藤原は国防論にまで例えた。同社刊の藤原の著書「猪木のためなら死ねる!」シリーズを構成した堀江ガンツ氏が聞き手だけに、”とぼけ上手”の藤原から味のある証言を引き出している。さらにUWFの”良心”山崎一夫にもアンドレ戦について語らせている。

 藤原VSキラー・カーン、前田VSスーパー・タイガー、橋本真也VS小川直也などの新日本、UWFにとどまらず、同書では北尾光司VSジョン・テンタ、川田利明VS高山善廣や女子プロレス、インディー団体まで大展開。巻末の「プロレス界主要ケンカマッチ&不穏試合年表」には日本プロレスからスターダムまで61試合をピックアップ。

 「今だからこそ口外できるケンカマッチの真実とは?」と宣伝されている通り、昭和、平成初期の述懐がベースで、どちらかが鬼籍に入っている組み合わせも多い。証言者は今となっては虚勢を張ることなく、戦友としてリスペクトできる立場になっているという時の流れは大きい。書名の過激さとは裏腹に読後感がさわやかだった。(酒井 隆之)

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