スピードスケート女子で初五輪代表(500、1000メートル)の吉田雪乃(23)=寿広=は、究極の速さを求めて細胞レベルで特訓を積む。ミラノ・コルティナ五輪の大本命は最短種目の500メートル。

勝負を左右するスタート時の爆発的な瞬発力などを上げるために、人体のエネルギー源と言われる細胞組織「ミトコンドリア」を活性化させるトレーニングを取り入れた。高性能のインドアバイクを活用し、能力を上げた要因を探った。(取材・構成=富張 萌黄)

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 吉田は、足腰の強化に高性能インドアバイク「ワットバイク」を使ったトレーニングを行ってきた。多くのスピードスケート選手もこの器具を用いて特訓を積む中、短距離で勝負する吉田は出力アップに着目。「超高強度インターバルトレーニング」を専門的にサポートする業者と契約し特訓を積んできた。

 究極の効能は細胞レベルで強くなること。細胞レベルとは「エネルギーの発電所」と言われるミトコンドリアだ。簡単に言えば、ミトコンドリアの量と機能を向上させることによって、持久力を高めることを目的にペダルをこいだ。心肺機能を高め、細胞レベルまで強くするのだが、ハードなため数週間に一度しか行えない。短時間で全ての力を出し切ることが、レースでの出力にもつながっている。効果は如実に表れ、500メートル、1000メートルでともに自己ベストを更新。吉田も「ワットバイクのトレーニングが増えて、ベースが上がった」と成長を実感している。

 特訓へ導いたきっかけは、師事する98年長野五輪金メダルの清水宏保氏(51)。ワットバイクのトレーニングをサポートする日本サイクス社のアドバイザーを務めていたことが縁になり、1シーズンで出力するパワーが大きく伸びた。30秒間全力でこいだ際のパワーの数値は開始からわずか8か月で9%も伸びた。同社の大木満さん(65)が「女子のプロの競輪選手とは比べものにならないくらい、吉田選手の方が高い」と絶賛するほどだった。

 トレーニング後に体への負荷を定量的にを示す、乳酸値のデータも大きく変化した。乳酸値が高いトレーニングほど、ミトコンドリアの活性化につながるという理屈で、吉田の乳酸値の数値は大木さんの扱う測定器を振り切るほど。男子の清水さんが長野五輪で金メダルを獲得した時期より数値が上で、特訓をサポートしてきた大木さんもワッと驚くデータをたたき出した。

 最初は半信半疑で行っていたトレーニングも、今では積極的に取り組んでいる吉田。ミラノ五輪へ、「これまで支えてくださった方に恩返しできるように頑張りたい」と意気込む。特訓の成果を全身全霊でリンクにぶつける。

 ◆吉田 雪乃(よしだ・ゆきの)2003年1月29日、岩手県生まれ。23歳。

小4から競技を始める。盛岡工高卒業後、寿広入り。22年1月、世界ジュニア選手権500メートル2位、1000メートル優勝。W杯通算3勝。自己ベストは500メートル36秒88、1000メートル1分13秒66でともに今季W杯で記録。中学時代は陸上部に所属し、100メートル障害が専門。164センチ。家族は両親、兄。

 ◆ミラノ五輪の女子500メートル展望 金メダル筆頭候補は今季世界新記録を出し、W杯7戦7勝のフェムケ・コク(オランダ)だ。瞬発力と持久力を兼ね備え、五輪シーズンで存在感を放っている。吉田はコクが不在だったW杯第4戦(ノルウェー)で今季初優勝。表彰台には計3度立っており、メダルは射程圏。

北京五輪金メダルの33歳、エリン・ジャクソン(米国)らを含め、メダル争いは混戦となりそうだ。

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