ノルディックスキー・ジャンプの五輪代表チームを陰で支えるのが“ジャンプスーツ職人”。スポーツ用具メーカー「ミズノ」社員で全日本スキー連盟(SAJ)のテクニカルスタッフ、尾形優也氏がそうだ。
日の丸飛行隊の飛躍を支えるジャンプスーツ。98年長野五輪団体で日本が金メダルに沸いた後も毎年のように何度もルール変更がなされた。22年北京五輪の団体で高梨沙羅がスーツの規定違反で失格になったことも記憶に新しい。代表選手も含め、200人以上の選手のスーツを担当しているミズノの尾形氏が言う。
「飛ばないスーツにするのが近年の傾向。スーツは安全性とルール内でつくることが第一です。ルールの範囲でいいものを追求しています」
厳しい検査を通過した上で選手が世界と戦うためのパフォーマンスを引き出す職人技は欠かせない。1つ1つがオーダーメイドだ。シーズン中、選手は長い遠征で体重管理の難しさがのしかかる。連戦に次ぐ連戦で簡単に体重も落ちてサイズも微妙に変わる。
「選手によっては助走を組みやすくとか、空中できれいな形を出したいとか、好みが違う。選手1人で何度か作り直すので、1年中、何らかの作業をしています。徹夜での作業は結構あります」
苦労は計り知れない。昨季2月の世界選手権でノルウェー・スキー連盟が揚力を得るためにスーツに隠し素材を故意に縫い込んで加工する組織的不正を行ったことが発覚。「技術的ドーピング」とみなされ、競技の存続さえ危ぶまれる大事件に発展した。25年6月に国際スキー連盟(FIS)が再びルールを改訂し、スーツの股下の長さを選手の登録値からプラス1センチ以上にするなど細かい変更が加えられた。この変更でスーツはよりタイトになり「ムササビ」の飛膜のような部分が減り、揚力が得づらくなった。
3Dボディースキャナーや改ざん防止のマイクロチップをスーツに導入するなど不正改造摘発も強化され、違反者は失格、長期資格停止処分と厳罰化された。男子エースの小林陵侑(チームROY)は「技術が大事な時代がきた」と話した。
◆尾形 優也(おがた・ゆうや)1997年9月14日、北海道・札幌市出身。29歳。東海大まで複合に取り組んだ元選手。20年にスポーツ用品メーカーのミズノに入社。同年夏からジャンプスーツの縫製などを担当している。ミラノ五輪ジャンプ男子代表の中村直幹は大倉山小から大学まで同じ学校で、その背中を追い続けた先輩。
◆主なジャンプのスーツ規定 スーツを平らに置いた状態で身長、股下、腕の長さ、首回り、足の長さなどが選手の体と一致するか細かく計測される。計測時の下着の形まで指定されるほど厳密。例えば体重が減ってゆとりが増えた場合は失格になる。



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