◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 裁判の傍聴経験は過去に何度もある。だが、安倍晋三元首相銃撃事件で殺人などの罪に問われ、奈良地裁で無期懲役判決を言い渡された山上徹也被告の裁判は、かつてない雰囲気だった。

 当日は競争倍率22倍の傍聴券を引き当てたが、傍聴席に座るまでが一苦労だった。今はどこの裁判所でも空港並みの荷物検査や金属探知機があり、大きな荷物はロッカーに入れる。今回は水筒やペットボトル飲料はもちろん、手指消毒用の除菌アルコールまで裁判所預けとなった。さらに驚いたのは腕時計、筆記用具のペンすら持てなかったことだ。盗撮、盗聴を防ぐためとはいえ、ノートしか持って入れないのには驚いた。

 京都アニメーション放火殺人事件を傍聴した際も、確かに厳重なチェックがあった。だが、今回のようにペンすら持って入れず、裁判所貸与のものしか使えないという経験はなかった。さらに、事前にしっかりとしたボディーチェックも行われ、上着のポケットからズボンの裾にいたるまで、入念にガッツリ触られたのは初めてだった。

 閉廷後は裁判所に預けた水筒を受け取る必要があったが、それも裁判所の外に一歩出てから受け取るという徹底ぶり。裁判所員は丁寧に対応してくれたため、威圧感は感じなかったが、裁判所自体に無言の圧力を感じたのは初めての経験だった。前代未聞の事件だっただけに、厳重さは理解できるが、裁判所によって、また事件の内容によって傍聴の仕方も変わるという、いい勉強になった。(芸能担当・古田 尚)

 

 ◆古田 尚(ふるた・なお)2003年入社。

運動部、文化社会部、整理部、事業部を経て19年から芸能社会担当に。関西ジュニア、宝塚歌劇団、映画などを主に取材。趣味は観劇。

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