近年、映画は”長時間化”の傾向がある。国内実写作品の興行収入記録を塗り変えた「国宝」は175分。

今年の米アカデミー賞で作品賞の最有力候補と言われているレオナルド・ディカプリオ主演の「ワン・バトル・アフター・アナザー」も162分ある。

 もちろん「長ければいい」訳ではない。特に最近は長時間集中して見ることができなくなっている人も多いという。そんな中、「いつの間にか時間が過ぎてしまった」と178分の上映時間を感じさせない作品、それが現在上映中の「カリギュラ 究極版」だ。

 同作は1980年に公開された作品を再編集したもの。米成人向け雑誌「ペントハウス」の創刊者として知られるボブ・グッチョーネ氏が、「時計じかけのオレンジ」で知られる英俳優マルコム・マクダウェル、「クィーン」で米アカデミー賞主演女優賞を獲得した英女優のヘレン・ミレンなどの豪華キャストが出演している。

 古代ローマ帝国の第3代皇帝・カリギュラの生涯を描いた作品は歴史の一大叙事詩…となるはずだったが、グッチョーネ氏が勝手にポルノシーンを付け加えたり、脚本を書き換えたりしたために、当初想定されていた内容とは全く別物に。「伝説の問題作」として知られると同時に、カルト的な人気となった。

 残念ながら記者は、公開当時の「オリジナル」を見ることができていない。今回初めて、この”怪作”に触れたのだが、そのインパクトに目が離せなくなった。

 ほぼ同時期に製作された世界的人気を誇るSF大作「スター・ウォーズ」の2倍にあたる46億円が投じられた巨大かつ豪華なセット。古代ローマ帝国がこの通りだったのかは知らないが、「もしかしたらこんなだったのかも」という奇妙な説得力を感じさせる。

 その宮殿の中で、「俺がルールブック」とばかりに何に縛られることもなく自由気ままに振る舞うカリギュラ。思うがままの人生は楽しいはずなのに、周囲のアドバイスを聞かずに放蕩(ほうとう)を重ねていくほどにまとわりつく孤独を通して、人間の業をこれでもかとばかりに描き出している。

 見終わった後、ハッピーエンドに満ち足りた気分で劇場を後にすることは、おそらくないだろう。モヤモヤが残るかもしれないし、結末にある意味ホッとさせられる人もいるかもしれない。ただ、誰もが「”いいもの”を見た」という気持ちになるのは間違い無いのではないだろうか。(高柳 哲人)

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