歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」(26日千秋楽)

 中村七之助(42)の奮闘ぶりに目を見張った。中村屋一門にとって大切な猿若祭が50年目を迎え、兄・勘九郎(44)と大作の初役に挑んでいる。

 七之助は4演目に出演。注目したのは夜の部「梅ごよみ」で主役の仇吉だ。芸者2人が色男を巡り意気地を張り合うのだが源氏名が「権兵衛名」と言われた意気な深川の辰巳芸者。江戸前の気風を吹かせるのが見せ場だ。

 序幕2場・隅田川川中の場。丹次郎(中村隼人)を見染める。屋根船の中から出て、すれ違う船の丹次郎を「そんなら、あれが。いい男だねえ」。うっとり見送る立ち姿がきれいだ。

 2幕2場・深川尾花屋奥座敷の場は丹次郎との色模様が艶(つや)っぽい。そして3幕2場の離れ座敷では羽織を土足で踏んだ恋仇の米八(中村時蔵)に「下駄のお礼は下駄で返す」とたんかを放って頭を下駄打ち。女の嫉妬と意地とは、恐いねえ。

七之助の各場はどの角度から見ても張りのある芸者だった。

 また「雨乞狐」では休演の中村鶴松(30)に代わり、勘九郎と6役を分け合った浄瑠璃の踊り。七之助の野狐では勢いよく下手から登場し、激しく躍動感たっぷりに踊った。

 中村屋、試練を恐れず。鶴松の襲名披露が延期となったものの一門、親類が結束して盛り上げた猿若祭。坂東玉三郎を追いかける女形の一番手。個人的にはいずれ、七三郎の名跡を願っている。初代七三郎は元禄期に初代市川團十郎と人気を二分した女形の名優。将来、兄・勘三郎と七三郎の共演。ね、楽しみでしょう。(演劇ジャーナリスト・大島 幸久)

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