60年ぶりとなる通常国会の冒頭解散により行われた衆院選は8日、高市早苗首相(64)率いる自民党が安定多数(243議席)を上回ることが確実(8日午後11時現在)となった。立憲民主党と公明党との新党「中道改革連合」が誕生するなど、波乱含みだったが、自民はなぜこれほどの「熱狂」を生み出せたのか。

政治ジャーナリスト・田崎史郎氏(75)が勝因と今後の政権運営の課題を分析した。

 田崎氏は自民党の勝因について「高市さんへの支持、高市人気によるところが非常に大きい」と指摘した。今回の選挙は「これまで自民党は何となく嫌だ」と感じていた無党派層が高市氏によって自民党に回帰したと分析した。

 「選挙前に、自民党に『政治とカネ』や『増税』といった大きなマイナス材料がなかったことは良かった点だ。一方で、高市氏は選挙期間中、『討論会キャンセル』『円安発言』があるなど、危うさもあった。結局、それらは批判の大きなうねりにはならず、中盤から終盤にかけて『やっぱり、高市さんでいいんじゃないの?』という空気が勝ったのでしょう」

 「石破政権では選挙に3連敗しても続投を模索するなど、重苦しく、閉塞(へいそく)感があった」とする一方で、有権者は高市氏の「明るさと颯爽(さっそう)」とした姿に「刷新感」を見いだしたと語る。

 「高市さんの出した『強く、豊かに』というシンプルなメッセージが新しいリーダー像を求める国民の深層心理と合致したことで、野党の批判や理屈を凌駕(りょうが)したと言えるでしょう」

 高市氏は「安倍路線の継承」を掲げつつも、その政治手法は単なる模倣ではない。田崎氏が注目したのは、解散に至るプロセスだ。

 「安倍元首相の懐刀であった今井尚哉氏(元首相秘書官・現参与)でさえ、今回の冒頭解散には反対し、年内解散を進言していた。しかし、高市氏はそれを振り切り、木原稔官房長官らごく少数の側近だけで解散を断行した。『過半数を取れなければ責任を取る』と当たり前のことをあえて明言し、公認候補を『私が選んだ候補』と強調して回った。こうした『身を張る』姿勢や、リスクを恐れず自身の責任を明確にする振る舞いが、リーダーとしての強烈な魅力を印象付けました」

 一方、野党勢力の敗因について田崎氏は、「中道」という旗印には曖昧さがあったと疑問視する。

「中道という意味が有権者に伝わらず、政党の顔となるリーダーたちもさえなかった」。公明党の組織票は機能していたものの、それ以上に「かつて、野党を支持していた層が自民党に戻ってしまった」ことが敗因だったと見る。「単純な足し算の協力関係では、高市旋風に対抗し得なかった」とした。

 圧倒的信任を得た高市政権だが、死角はないのか。今後の政権運営について「調子に乗らないこと」が最も重要だという。安倍一強と言われた時代には、舌禍問題や数々のスキャンダルが起きた。選挙で勝ちすぎたが故に、緩んで、おごりを生んだ。「勝って兜(かぶと)の緒を締めよ、という言葉がある通り、勝ったからといって自分の思う通りに突き進めば、今回支持した層も『おかしい』と離れていく。どんな政策であっても、賛否が分かれる法案であっても、丁寧に野党の声を聞いていく。こうした慎重な運営が求められます」

 3月19日には、トランプ米大統領との首脳会談を控える中、強力なリーダーシップを確立した高市首相。その「強さ」を独善ではなく、安定した統治へと昇華できるかが、長期政権へのカギとなりそうだ。

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