自民大勝に終わった今回の選挙。高市早苗首相の個人人気は、やはりすごかった。

最終日、東京・二子玉川で行われた最後の演説には約1万人が殺到。日が暮れた午後7時、聴衆が携帯ライトで夜空を照らす姿は、芸能人のライブを思い起こさせた。

 人気の一因は、高市氏のしゃべりにある。「内閣そぅり大臣のぉ、高市早苗です」。抑揚を付けた語り口は、聞きやすさがある。「自分の言葉で話しているな、しがらみがないな」と印象づけ、おカタい首相じゃない人間らしさを感じさせるものだった。

 先月26日に行われた党首討論。中道・野田佳彦氏から物価高対策の質問に答えた際、高市首相は1分の持ち時間をオーバー。時間を告げるベルの「チーン」の音のあとにも20秒しゃべり続け、司会者から「まとめてください」の声が飛んだ。野田氏から「小さい市町村ほど、選挙実務が入って、職員が働いて働いて働いてという状況になっている」と言われると、発言機会でもないのに「実際の食味と選挙実務は別の部局ですよね」と口を挟み、再び司会者から「(野田氏の)発言中ですので」と制された。国民・玉木氏からの食料品消費税ゼロに関する質問への返答でも、高市氏は時間オーバーで「チーン」。玉木氏の反論中に再び口を挟むと、またまた司会者から「後ほどまた議論をお願いします」と制され苦笑いしていた。

 首相なのに時間管理ができない…との批判が来てもおかしくない。だが、少々のミスがある方が、とても人間くさい。演説でも「人間くささ」が序盤の高市氏のカギとなった気がする。マーケットを人一倍気にするのに、切り取られれば拡散されやすい「円安ホクホク発言」を繰り出してしまったのも、自分の言葉でしゃべってしまったからこそだ。

 似た人がいた気がする。安倍晋三首相だ。国会討論でも「この議論は意味ない」など感情的な言葉を発し、野党と対立することもたびたびあった。さかのぼれば、小泉純一郎首相もそう。長期政権を築く人気宰相の共通点とも言える。

 だが終盤、高市氏の演説には変化があった。7日の最終演説は「安全性重視」で聴衆にさしたる熱もなく、みんながぞろぞろ帰宅するだけだった。NHKの討論番組を関節リウマチのためにキャンセルしたこともあり、対外的にも強く訴えるものは少なくなった。

 高市人気が雪だるま式となった今回の選挙だが、引き換えに原点の「しゃべりのおもしろさ」が喪失。今後の国会論戦、高市首相は「ミスはあるけど熱がある」か「ミスはないけど熱はない」のどちらになるのか。日本の将来を占うカギになる気がする。(樋口 智城)

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