フリーの垣花正アナ(54)は、2023年7月に突発性難聴を発症した。現在もアシスタントを務めるニッポン放送のラジオ番組「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」(土曜・前11時)の出演当日に起こった異変。

それまで病気にかかったことがなかったが、生活習慣を大幅に見直すきっかけになった。長年共演し、闘病に寄り添った経済アナリスト・森永卓郎さん(25年1月死去、享年67)への思いにも触れた。(堀北 禎仁)

 「今でも思い出すと怖い」という体験だった。2023年7月29日の早朝。起床すると突然めまいに襲われた。「起きたら部屋の天井がグルグル回ってて。すごいスピードの回転系アトラクションに乗ってるみたいになった」

 この日は和田アキ子のアシスタントとして、生放送の「―いいかげんに1000回」に出演する日だった。「絶対休めない。休むという選択肢はない。これは大変なことになった」。めまいが治まるのを待ったが「それどころか、ものすごい吐き気がきた。トイレに行かなきゃと思って立ち上がろうとした時に立てなくて」。

歩くのもままならない中、必死にタクシーを呼んで病院へ直行した。

 番組は休演。病院でMRI(磁気共鳴画像)検査を行い、脳に異常がないことが診断された。ホッとしたのもつかの間、右耳が全く聞こえないことが判明した。

 「突発性の難聴は、基本的に3パターンあるんですって。聴力が100%戻るか、3分の1から半分ぐらい戻るか、全然戻らないか。『運です』って言われた」

 夜遅くに何とか帰宅。「吐き気が治まったことが一番良かった」と一安心した。右耳が半分以上聞こえなくなる可能性を覚悟していたが「幸い、3日後には聴力が3分の2以上戻った。100%戻るのが理想でしたけど、まあ良しとしてやるか、と思った」。

 仕事に復帰して、救われたのは和田の優しさだった。「アッコさんとの出会いは最大の僥倖(ぎょうこう)」と尊敬する大先輩と同様に、番組で共演するマツコ・デラックスにも気遣われた。

「タレントとしての顔じゃなくて、本当に仲間を心配してくれる気持ちが顕著でしたね。ああいう時に人間味が出る」と感謝しきりだ。

 発症から約2年半がたった現在も、右耳の聴力は「全盛期に比べれば悪い」。ラジオでは両耳にイヤホンをつけるので問題ないが、支障があるのは居酒屋など雑踏での会話。「声が聞き分けられない。目の前の人がしゃべってても、隣のテーブルからの声と交ざり合っちゃう」

 ずっと考えたことがなかった難聴の人の気持ちが、今では痛いほど分かる。「聞こえづらい人に対して親切にならなきゃと思った。ラジオでも少しゆっくりしゃべって、大事なワードはいつも以上に注意して丁寧に言うことに手を抜かないようになった」

 ダウンする予兆が全くなかったわけではない。前夜に仕事でストレスのかかる一言を言われていた。「緊張の糸が、疲れとともにプツっときたんだろうな…」。それ以降は「ちゃんと休めるときに休み、無理をしない」ことを肝に銘じた。

 飲酒もやめた。

「あのめまいはもう二度と味わいたくない。放送ができなくなるのが一番嫌」。新たな発見もあった。「飲まなくても飲み会が楽しいんだということが分かった。俺、性格的に酔っ払ってる人と一緒にいると同じくらいテンション上げられるんです」

 食生活は妻で声優の西田裕美に合わせて、朝と昼の1日2食に。巨額の借金や遅刻を繰り返していた20代の頃に110キロだった体重は、80~84キロで安定するようになった。あくまで無理はしないので「間食もしてるし、ゆる~い縛りです。精神的に我慢したり圧がかかったりするのが一番苦手なんですよ。自分にストレスをかけないようにするというのが一番の健康法かもしれない」

 メインパーソナリティーを務めるニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」(月~木曜・前8時)では、25年に原発不明がんのため亡くなった森永卓郎さんと約15年にわたって共演。死の前日まで番組で言葉を交わした。「自分が病気になって初めてモリタクのすごさが分かりましたね。どれだけ精神力が強い人なんだ、と」

 別れから約1年。

「いろんな方と面白く、雑談風に楽しくニュースをやるスタイルはモリタクが残してくれたもの」と喪失感はない。「具合が本当に悪くなっていく時のモリタクを、心配しながらイジってた時期がある。精神的にすごくキツかった。今はもう心配しなくていい」

 突発性難聴はつらかったが「戒めになった。悪いことが起こった時にも、これは何かいいことが起こる前触れだと思える。それが良かった」とポジティブに受け止めている。

 常にご機嫌でいることが、ストレスをためない秘訣(ひけつ)だ。「嫌いな人を作らない。どうしてもダメな人は、申し訳ないけど距離を取る。これが一番の精神的な衛生法ですね」

 支えてくれる妻への感謝も忘れない。「毎日必ず『あなたのおかげです、愛してます』と言ってます。『君と結婚してなかったらとんでもないことになってました』と言うと、向こうは『そうだろうな』って(笑)。

それがちょうどいい関係です」

 かつてモヒカン頭に革ジャン姿で借金ネタを話す“暴走キャラ”だった垣花アナは、すっかり健康派の顔になっていた。

 ◆突発性難聴 内耳が障害を受け、突然耳が聞こえにくくなる病気。原因が特定できないため、国の特定疾患(難病)に認定されている。目まいなどが起こる可能性も。08年に浜崎あゆみ、12年にスガシカオ、17年に堂本剛、21年に皆藤愛子アナ、22年にHey!Say!JUMP・八乙女光が発症を告白した。

 〇…垣花アナが月曜から木曜までパーソナリティーを務める「あなたとハッピー!」は、来年で放送開始から20周年。「今すごくいい状態だけど、そういう時には何かが起こる。突発性難聴のように。あと5年、10年いけそうだと思った瞬間に足をすくわれる」。01年からアシスタントを務める「―いいかげんに1000回」とともに、目の前の放送に全力を注ぐ。

 ◆垣花 正(かきはな・ただし)1972年1月1日、沖縄・宮古島生まれ。54歳。

94年に早大社会科学部を卒業し、ニッポン放送入社。95~99年に放送された「ゲルゲットショッキングセンター」では“LFクールK”を名乗り、中高生の絶大な支持を得る。2019年フリーに。現在の出演番組はTOKYO MX「5時に夢中!」など。24年には自身のアナウンススクールを設立。著書に「人は出会いが100%」。

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