巨人、レッドソックス、ロッテで日米通算549試合に登板し、1月に現役引退を発表した沢村拓一氏(37)が16日、茨城県内の寺院を訪れ、元日本テレビアナウンサーで22年5月14日に脳出血のため54歳の若さで亡くなった河村亮さんの墓前に現役引退を報告した。

 東京から車で約2時間。

沢村氏は河村さんのお墓の前で手を合わせた。道中の車内では、河村さんが担当した巨人戦中継や箱根駅伝の実況音声を再生。「河村さんの言葉って深みがありますよね。何でそんな言葉が出てくるんだろうと思いますし、引き出しが多いなと。思っていることを言語化したり表現するのが難しい中で、本当にすごいですよね」と感極まった。

 日本テレビでスポーツ実況のエースアナウンサーとして巨人戦中継や箱根駅伝などで活躍した河村さん。常に選手をリスペクトし、物腰が柔らかく、丁寧な取材、細かい準備に基づいた愛情あふれる実況で巨人ナインから絶大な信頼を集めた。選手の動きをよく観察しているから、小さな変化にもすぐ気づいた。沢村氏もその真摯(しんし)な人柄に心を打たれた一人だった。

 「東京ドームでの試合の日、まだ照明が薄暗い中で(試合開始6時間以上前の早出練習で)外野を走っていると、河村さんが遠くからじっと見ているんですよね。選手のことを本当によく見てくれているな、といつも感じていましたし、すごく応援してくれていました。僕が一番好きなアナウンサーでした」

 2012年の日本シリーズ第6戦、巨人・日本ハム戦(東京D)で沢村氏は先発して6回3失点と好投した。

坂本が打ち、矢野が打ち、長野が本塁打を打ち、阿部が決勝タイムリー。チームは4―3で競り勝って日本一の頂点に立った。この試合で実況を担当していたのが河村さんだった。

 豊富な知識、巧みなワードセンスで数々の名言を残した河村さん。箱根駅伝では07年第83回大会で「山の神、ここに降臨! その名は今井正人」と5区で当時区間新記録の順大・今井をたたえた。沢村氏は「僕が箱根駅伝を好きになったのは河村さんの実況があったからです」と振り返る。

 現役引退し、解説や講演活動、バラエティーを含めたテレビ番組など活動の幅を広げる沢村氏。投球ではなく、自身の言葉で思いを伝える立場になったからこそ、河村さんのすごさを改めて実感しているという。

 「今でも何か困った時とか落ち込んだ時は河村さんの実況を再生して、声を聞いて力をもらっています。自分の言葉で人に何かを伝えるためには、日頃から何事にもしっかりと向き合っていかないといけないんだなと思わされますね」

 悲しみに包まれた突然の訃報から3年以上たった。お墓参りを終えた沢村氏は言った。「僕はいつまでも河村さんのことを忘れないですし、忘れたくないです」。

天国の河村さんに思いを届けた。(片岡 優帆)

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