米大リーグ選手会が、約13年間トップの事務局長を務めていたトニー・クラーク氏(53)の電撃辞任に揺れている。米メディアによると、2023年から組合に採用されている義理の妹との不適切な関係が発覚したことが辞任の理由。
私が初めてクラーク氏に会った時のことが思い出される。1995年の春、野茂英雄氏がドジャース入りしたことで、キャンプ取材のために米・フロリダ州に行った時のこと。同じくフロリダにキャンプ地・レイクランドがあるタイガースの施設を訪れると、そこで彼がただ一人、黙々と練習していた。同じポジションで日本帰りのセシル・フィルダーがメジャーに在籍していたことで、1990年のドラフト1巡指名でタイガース入りしたクラーク氏はマイナー選手だった。当時は94年8月から続いていたMLBのストライキ真っ只中だっただけに、メジャー選手は皆無。マイナーは通常通りに前年から試合もキャンプも行われている状況だったため、クラーク氏はグラウンドに居た。「ストライキでメジャー選手がいないのは残念だけど、今がチャンスなのかもしれない」と話していた。
声を掛けたら真摯に対応してくれたあの男が、こんな形で辞任するとは。そして彼に初めて会った時と同じようなストライキが、今回また起こる可能性があると米メディアが騒いでいるからこそ、穏やかではいられない。
201センチの両打ちのクラーク氏は4月2日にストライキが終わった95年、9月にメジャー昇格。その後は3年連続30本塁打するなど通算251本塁打を放った。
現役引退後は、2010年に選手会の選手関係担当部長に就任し、2013年7月に副事務局長に昇進した。その直後、事務局長のマイケル・ワイナー氏が脳腫瘍に倒れ同年11月に亡くなり、クラーク氏が選手経験者では初めての事務局長にトップに昇格。現在のような選手会になったのは1965年。フリーエージェント制度を構築した初代のマービン・ミラー氏、ケネス・モフェット氏、ドナルド・フェア氏、そしてワイナー氏に続いて5代目となった。
クラーク氏は選手たちを率いて労働協約改定時期にオーナー側と交渉を進めた。2016年12月は、協約失効する約3時間半前に合意。また、2021年オフには99日間のロックアウトの後、2022年3月の合意に導いた。10年以上務めた事務局長としてはミラー氏、フェア氏に次いで3人目ながら1度も選手会にストライキを起こさせなかったことでも知られている。
新事務局長にはクラーク氏の片腕として働いていたブルース・マイヤー副事務局長の昇格が決まったが、同氏に対しては2024年に選手会小委員会の一部から同氏解任を主張した選手がいた事件もあったという。
現行の労使協定が期限切れとなるのは12月1日。今回の5年間の労働契約に代わる合意についての労使交渉が4月に開始される予定で、この大事な時期にトップ不在を避けるためのマイヤー氏昇格人事とも言われている。
※参考資料 AP通信、米大リーグ公式サイト
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)










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