ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート女子で、銀メダルを獲得した坂本花織(シスメックス)。2大会連続でのメダル獲得は、日本女子初。

現役ラストシーズンに、日本フィギュア最多となる4個目の五輪メダルを獲得した。

 坂本最後のシーズンを支えたのが、昨年6月、神戸市内に新設された「シスメックス神戸アイスキャンパス」だ。国際規格の通年型のリンクが新拠点となり、練習時間は倍増した。運営する「神戸スケート」の代表理事で、五輪2大会連続出場の経験がある平松純子さんは「念願だった」と語る。

 「神戸に通年型リンクが出来たことは、画期的でした。これまで神戸市内のリンクは、プールと兼用のため冬季利用のみ。リンクからプールへの転換にも時間がかかるため、以前は『1日でも長く(リンクを)開けてください』と、連盟としてお願いしていた時期もありました」

 新拠点が出来るまで坂本らは、神戸市や西宮市、時には大阪まで出向いて練習環境を確保。リンクを貸し切るため、早朝や深夜練習を強いられる時もあった。平松さんをはじめ、県のスケート連盟は神戸市内に通年型リンクの建設をかねてより切願。シスメックスの秘書室長で、神戸スケートの林譲治事務局長は、22年北京五輪で銅メダルを獲得した坂本らの活躍が風向きを変えたと説明する。 

 「通年型リンク建設を訴える声は以前からありましたが、坂本選手の北京での大活躍が決定的となりました。シスメックスは、2017年から坂本選手らをサポートしています。

北京五輪後、弊社会長の家次(恒)が『(通年)リンクが必要だ』という事で、県や市と共に動き出しました。本格的な始動から、約2年で完成しました」

 家次会長を中心に、建設費用を用意。スピード感ある動きに、平松さんも感謝する。

 「私たちからすると、幸運でした。私自身、建設の必要性を訴える中で時間がかかりました。シスメックスさんは、神戸マラソンの特別協賛もされています。スポーツにとても理解がある家次会長のご協力のもと、2年で完成したというのは大変ありがたかったです」

 林氏によれば、リンク完成後は坂本が所属する「神戸クラブ」の生徒も増加。県外からも、練習環境を求めて訪れるという。時に、小学生らジュニア選手と練習するときもある。平松氏は目を細める。

 「子どもたちにとっては、大きな刺激になると思います。坂本選手と一緒に氷に乗って、スケートができる。

トップ選手のスピードや、ジャンプを近くで見られるのはとてもいいことです」

 中野コーチのもと、トップ選手が利用する朝の貸し切りは坂本が費用負担しているという。その枠の中で、チームメートも練習する。そして専用リンク最大のメリットは、フレキシブルに利用できること。平日は、一般利用の時間にスピンなどを自主練習するときもある。

 「リンクによっては、貸し切りの時間以外では練習してはダメな所もあります。例えば大学生なら、突然休講になって時間が空くこともあります。当然、周囲に注意は払いますが、そこで柔軟に練習が出来るということはありがたいことです」

 リンクは国際規格。観客席は無いが、小規模まイベントなどは行えるという。現役引退後は「神戸スケート」に指導者として関わる坂本。“坂本花織杯”などの創設にも期待がかかる。

 平松さん「そういったイベントも、できるのではないでしょうか」

 林氏「坂本選手も、このリンクには残ってくれると思います。公式の大会は難しくとも、ローカルな、お披露目会のような大会は出来るのではないかと思っています」

 これまで、国際連盟の審判員などを歴任、多方面から日本フィギュアの発展に貢献してきた平松さん。

自身は全日本選手権7連覇の稲田悦子さん(故人)に師事、関西に根付くフィギュアスケートの文化継承と、発展を願う。

 「選手育成のためには、コーチ、連盟の役員、審判員などそれぞれの役割からのサポートが必要になります。兵庫県には、次世代をみんなで育てようという気風があります。一つの仕事に囚われず、色々な経験をして日本のフィギュアスケート界を盛り上げていってほしいなと思います」

 

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