ミラノ・コルティナ五輪が日本時間23日に閉幕した。日本勢は過去最高となる24個のメダルを獲得し、数多の名場面が観客、視聴者の胸を熱くした。

その中でも多くの人々の心を震わせたシーンは、フィギュアスケートペアで日本初の金メダルに輝いた三浦璃来(24)、木原龍一(33)組=木下グループ=の「りくりゅう」の大逆転劇だろう。圧巻の演技だけでなく、ネット上では2人の関係性にも注目が集まった。これほどまでに人々の関心を引き、「りくりゅう」の人気が爆発したのはなぜか―。

 ショートプログラム(SP)5位から五輪ペア史上最大となる6・90点差をひっくり返したフリーの大一番。一糸乱れぬあうんの呼吸で、高難度のコンビネーションジャンプ、スロージャンプ、見せ場のリフトも決めて世界最高得点をマークした。ベストを出し切った2人はひざまずき、泣きながら抱き合った。SPのリフトでミスが出て、フリーの演技直前まで泣き続ける木原に、三浦は「私は今日、龍一くんのために滑るよ」と鼓舞し、木原は「お互いのために滑ろう」と前を向いたという。最後までパートナーを信じ、逆境でもあきらめない姿が日本中に共感と感動を呼んだ。

 スピード感あふれる技の連続で、一歩間違えれば大ケガにもつながりかねない。そうした不安を感じさせない安定感が戻った2人に、ネット上では「信頼と愛情がなければ出来ないペアのパフォーマンス」「りくりゅうは恋人とか夫婦とか、そういう関係性を超越した繋がりがあると思う」といった声が上がった。男女ペアのスポーツは、色眼鏡で見られてしまいがちだ。バドミントン卓球、テニスなどの「混合ダブルス」よりもフィギュアはその傾向が強い。

時に体を密着させ、多幸感あふれる雰囲気…技だけでなく美しさも問われる特性があるからだ。

 しかし三浦と木原には、男女ペア競技の“偏見”を超えた愛を感じさせる。「りくりゅう」の出会いは19年7月。互いに前のペアを解消し、新たなパートナーを探している時だった。木原が三浦を真上に投げ、三浦が身体を回転させる技、ツイストリフト。投げた瞬間に、木原は「雷が落ちた」と本能的に感じとったという。一流のアスリート同士が、互いの演技における相性の良さを実感するのに時間を要さなかった。あれから7年、演技や会話から伝わってくる信頼感と深まった絆が、順位や結果以上に見る人の心に残り、感情を動かした。金メダルを首にかけた三浦は「本当にたくさんの方々に『龍一くんと巡り会えたのは奇跡なんだよ』と言っていただける。すべての人々に感謝している」と話した。

 19日放送のTBS系「THE TIME,」では、知られざるカナダでの共同生活について明かした。「普段からけんかすることってないんですか?」と司会者に聞かれた三浦は「本当にスケートのことでは言い合いはあまりしないんですけど、普段からちっちゃいけんかはよくします。

なんか兄弟けんかみたいな感じ」と笑いながら返答。共同生活は「常に一緒にいるので、それがもう当たり前みたいになっています」。パートナーというより“ファミリー”のような暮らしぶりが伺えた。

 演技以外の話題でもファンを楽しませた。表彰式で木原が三浦をひょいと持ち上げて移動させる姿、通称「木原運送」が注目を集めた。19日放送の日本テレビ系「ZIP!」で木原は「璃来ちゃんが変なところでこけてしまうので、ケガをしてほしくないなという思いがあって」と、ケガのリスクを減らすためだと説明。細やかな気遣いに、ネット上では「サポート以上の愛情の表れ」とほっこりするコメントが寄せられた。

 北京五輪では日本勢初の7位入賞を果たしたが、「4年後も8年後も(五輪を)目指したい」と語っていた木原。有言実行どころか、最高の結果をもたらした。その裏には、2人の演技へのひたむきさと、相手への思いやりがあった。いい意味で、ビジネスパートナーという言葉が似合わない。そんな2人の「超越した」愛が人々の心をひきつけた。

4年後、フランス・アルプス五輪で連覇する「りくりゅう」の姿をもう見たくなっている。

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