歌舞伎俳優の尾上松緑が5日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「三月大歌舞伎」(26日千秋楽)の夜の部「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」に出演した。

 幕末から明治時代にかけて活躍し、盗賊が活躍する白浪物を得意とした河竹黙阿弥が、同じ「吉三」の名を持つ3人の盗賊と百両の金を巡る因果話を、独特の絵画美と叙情美豊かに描く物語。

松緑が情に厚く責任感の強い兄貴分の和尚吉三、中村時蔵が女に化けて盗みを働くお嬢吉三、中村隼人が御家人崩れの悪党、お坊吉三を演じた。

 節分の宵、大川(隅田川)の川端にある庚申塚で、お嬢吉三(時蔵)が、夜鷹のおとせ(尾上左近)から百両の金を奪い取る。道を尋ねるふりをして華麗に盗みを働くお嬢が「月もおぼろに白魚の…」から始まり「こいつぁ春から縁起がいいわえ」でしまる黙阿弥独特の七五調の名ゼリフを披露すると、心地よい響きが、観客を一気に作品の世界へと引き込んだ。

 お坊吉三(隼人)が駕籠(かご)の中から現れ、お嬢吉三と百両の金を巡って争うところ、吉祥院の所化あがりの盗賊・和尚吉三(松緑)が仲裁に入る。貫禄ある和尚の取りなしにより、同じ「吉三」の名を名乗る縁から義兄弟の契りを結ぶ。過去の因縁が複雑に絡み合い、身動きが取れずに苦しむ人々の姿が、黙阿弥ならではの様式美と共にドラマチックに描かれる。

編集部おすすめ