歌舞伎座「三月大歌舞伎」(26日千秋楽)

 その声、その姿。坂東巳之助(36)に新たな発見があった。

今月は昼夜の通し狂言で尾上松緑(51)とのダブルキャストで競い合っている。昼が「加賀見山再(ごにちの)岩藤」、俗に「骨寄せの岩藤」。役は岩藤の霊と鳥井又助。夜は「三人吉三巴白浪」の和尚吉三。巳之助は15歳年上の兄さんに挑んでいるのだ。

 興味は岩藤と又助。まず、又助。物語はお家騒動が起きた多賀家の忠信又助の筋、お初に討たれた局岩藤の怨霊が現れる筋が交じり、巳之助は善人と悪人の二役を演じ分けるのである。

 3回見せた見得(みえ)がいい。序幕1場。当主の奥方・梅の方の殺しに向かう花道では右足を大きく踏み出し、強い意志を描く。2場は川からはい出ての見得。

ぬれた着物を絞って決めた形は「忠臣蔵」の定九郎をなぞっている。大向こうなら「そう、いい形!」と声を掛けたいほどだ。

 岩藤は2幕1場。亡霊となって「おのれに恨みを…」と、調子を変えて張った声が響き渡った。見せ場の3幕目が草履打ちの場。中老尾上(中村時蔵)の頭、体を打ち据える。どの場も凄(すご)味のある声が彼の持ち味なのだろう。

 父・10代目三津五郎が没して11年、巳之助襲名から31年経った。坂東玉三郎が強力に後押ししてくれる、いや、当方が元気なうちに大和家一門による11代目三津五郎の襲名口上を早く目撃したい。近年の成長が著しい巳之助の襲名はぐんぐんと近づいている。(演劇ジャーナリスト・大島 幸久)

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