「死ぬる覚悟が…」。大ヒット映画「国宝」(李相日監督)にも登場した「曽根崎心中」の名場面。

現在、京都・南座では中村壱太郎(35)と尾上右近(33)が出演する「曽根崎心中物語」(近松門左衛門作、中村鴈治郎監修、25日まで)が上演され、連日盛況だ。実際に起きた心中事件をもとに遊女・お初と手代の徳兵衛の究極のラブストーリー。成長著しい2人が役替わりで演じることでも関心を集めている。お初は4度目、徳兵衛は初役の壱太郎は「(徳兵衛が)これほどしんどい役と思わなかった」と明かす。

 記者は初日(3日)に両方のバージョンを見た。幕切れなど演出も違う。お初で比べると壱太郎が少女のような、はかなさを思わせるのに対し、右近のそれは母性の包容力を感じさせた。印象のあまりの違いに驚く。上演後はこの2人による30分間の「特別対談」が付く。トーク術にたけ、中身も濃い。サプライズでゲストが登場することもある。

 「国宝」で所作指導もした壱太郎が観客に問いかけていた。

「今日、初めて歌舞伎をご覧になった方」。年配の人もかなり手を挙げていた。そして「皆さんの知っている“曽根崎”がなかなか出てこなかったでしょう」と。おなじみの名ゼリフは物語がかなり進んでからだ。「そこに至るまでを理解してほしいのです」と説明する。一方の右近。上方の演目での大役に「なじみが薄い中での挑戦は緊張するが、この重圧を楽しみたい」ときっぱり。客席に向けて「歌舞伎のお客さんとしての国宝を目指してください」と呼びかけていたのも印象的だった。(内野 小百美)

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