◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 2月に歌舞伎俳優の市川中車と俳優の香川照之を取材した。同一人物が作品ジャンルによって名前を使い分け、言動も別人のようで興味深かった。

 5日に行われた「歌舞伎町大歌舞伎」の会見には市川中車として息子の市川團子と出席。幼少期から稽古に励むのが一般的な歌舞伎界に、46歳という異例の高齢で飛び込んだ経緯もあり、「我々は親子ですが、2012年6月5日に初日を迎えた同輩。私はどんどん、息子に差を付けられています」と自虐的に語るなど終始、低姿勢だった。

 一転して21日は映画「災(さい) 劇場版」の舞台あいさつに香川照之として登壇。劇中で謎の男6役を変幻自在に演じ分け「この仕事を40年やっていますが、間(ま)の取り方が、キャリアで最大の宝」と胸を張った。ドラマ「半沢直樹」などで印象的な悪役を演じたことを踏まえて「悪役の集大成。私を劇場で見られるのは最後かもしれません」とジョークも飛び出し、大物俳優の風格を漂わせた。

 22年に週刊誌で報じられた女性問題の影響でドラマやCMを降板。この約3年半は歌舞伎に軸足を置き、地上波ドラマには一切、出演していない。そのため、舞台あいさつで久しぶりに威勢のいい香川節を聞くことができて、うれしかった。

 市川猿翁(3代目猿之助)と浜木綿子の間に生まれ、ボクシングと昆虫が大好きな東大卒のインテリ俳優は、昨年12月に還暦を迎えた。酸いも甘いも経験し、円熟味が増した香川照之の演技を地上波ドラマでも見せてほしい。

(芸能担当・有野 博幸)

 ◆有野 博幸(ありの・ひろゆき)2001年入社。好きな映画は「ゆれる」、好きな歌舞伎の演目は「心中月夜星野屋」。

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