◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)挑戦者決定戦10回戦 同級4位・増田陸 (8回TKO) 同級1位ノニト・ドネア●(3月15日、横浜BUNTAI)

 WBA世界バンタム級挑戦者決定戦で、同級4位・増田陸(28)=帝拳=が元世界5階級制覇王者の同級1位ノニト・ドネア(43)=フィリピン=を8回TKOで下し、WBA王者への挑戦権を獲得した。

 伝家の宝刀・左ストレートで、増田が伝説を破壊した。

7回残り20秒。右サイドへのステップインからの左ストレートが、ドネアの顔面に食い込んだ。「抜けるような感じで、手応えがあった」。43歳の両膝は崩れ、背中からバッタリと倒れた。さらに8回、ワンツー4連打をたたみかけると、相手陣営からタオルが投げ込まれた。自らを「拳闘士」と名乗る勝者は、リング上での喜びは控えめだったが、試合後会見では「ふつふつと(喜びを)実感している。必ず世界チャンピオンになります」と相好を崩した。

 日々の鍛錬で、自らの拳を磨き上げてきた。24年7月の日本王座獲得後、日本刀を購入した。600~700年前の室町時代に打たれた真剣だ。「日本のものづくりの原点。その緻密さや丁寧さに、感じるものがある」。

刀匠の作刀の工程を自身のボクシングに重ねた。頭の位置、前の手(右手)の使い方、足の幅など、一つ一つを大和心トレーナー(50)と突き詰めた。武器の左に加え「右も多彩な使い方ができるように練習した。それが試合で出せた」と進化を口にした。

 ジムの先輩でもある元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏の「神の左」の継承者が、左フックを武器に世界5階級を制覇したレジェンドとの「真剣の斬り合」を制し、世界に王手をかけた。

 標的となるWBA正規王者・堤聖也(30)=角海老宝石=とは、23年8月のデビュー4戦目で対戦。当時の日本王者・堤に挑んだが、判定で敗れた。増田にとって、プロキャリア唯一の黒星だ。この日はリングサイドに堤の姿があったが、「どこにいるかは全く意識していなかった」という。WBAには休養王者アントニオ・バルガス(29)=米国=もいるが、堤への挑戦が実現すれば王座とリベンジを懸けた一戦になる。

 「堤選手と再戦できるというのは個人的にも楽しみだが、誰が相手でも世界王者らしいボクシングができるよう練習に取り組んでいきたい」。古今無双の切れ味を誇る名刀・左ストレートを武器に、戦国のバンタム級で天下取りへと踏み出す。

(勝田 成紀)

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