柔道女子78キロ超級で元世界選手権金メダルの朝比奈沙羅(FUKUDEN&GRIP)が、3年ぶりとなる全日本選手権(4月19日、横浜武道館)出場を決めた。予選を兼ねた東京都選手権(15日)で3位となり「やはり、本戦に出たいというのが第一目標としてあったので。

本当によかったという一言につきます」と、表情を緩ませた。

 昨年のこの大会で、約1年半ぶりに戦線復帰。前回は2回戦で敗退し、本戦出場を逃した。「悔しい、もっと強くなりたいという気持ちがありつつも、なかなか柔道着を着る気になれなかった」。半年間、道着を着たのは数回。その中で、思いを動かす別れがあった。独協医大進学後、練習環境を与えてくれた作新学院(栃木)柔道部の元監督、池田貴志氏(享年59)が昨年逝去。朝比奈は、保護者を通じて訃報を知った。「卒業生でもない、出稽古に行っていたイチ人間でも、保護者の方から連絡を頂いた」。言葉はなくとも、恩人が気にかけてくれていた思いを感じ取ったという。

 医学生として、勉学を中心とした生活になった時期に「作新さんが、練習を受け入れて下さった。池田先生に、ずっとお世話になっていた」。

昨夏前までは連絡を取っていたが、病に倒れたことも自身には知らせなかった。「9月に、急に亡くなったと聞いた」と朝比奈。感謝を直接伝える機会はなくなったが、師の気遣いを感じ、恩返しは何かと自問自答した。「今、自分ができることは高校生たちにいい影響を与えること、いいロールモデルになれること」。試合で勝てなくなった自分にも、変わらず接してくれた池田氏。畳に立つことが報いと、思いを固めた。

 昨夏の間も、マネジャーを務めるラグビー部で部員とともにランメニューをこなすなど、体力キープ。勉学でも白衣式を終え、残り2年での卒業を見据えている。目の前の目標をクリアし、4月に控える自身10度目という全日本の舞台。「何者かになって」と掲げた復帰時の思いは、変わらない。「朝比奈沙羅のようになりたいとか、目標にされるような人間として確立していけるように、自分の価値を高めていけたら。柔道だけが自分の価値ではないけど、やはり勝つことで価値が上がるという面もあるので。

全日本でいい試合をしたいというのが、今の一番の目標」。皇后杯で最後の栄冠は9年前。勝負師の心を、再び奮い立たせる。

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