大相撲春場所9日目(16日、エディオンアリーナ大阪)

 東前頭6枚目・一山本は1分40秒超えの熱戦の末、西同7枚目・伯乃富士に上手ひねりで逆転負けした。15日に元大関・若嶋津の日高六男さんが肺炎のため69歳で死去。

一夜明け、先代師匠への感謝の思いを胸に土俵に立ち、弟子は教えの通り土俵際まで前に攻めたが白星は届けられなかった。関脇・霧島は東前頭4枚目・大栄翔を突き落とし、平幕の琴勝峰、豪ノ山とともに1敗で首位を守った。横綱・豊昇龍は西前頭4枚目・隆の勝を寄り切り、両者が2敗で並んだ。

 亡き先代師匠、若嶋津さんの教えを忠実に守って、一山本は前に出た。だが、伯乃富士を土俵際まで追い詰めたところを上手ひねりで転がされた。1分41秒8の手に汗握る大相撲で敗れ、「立ち合いで相手の形になってしまった」と反省した。

 8日目(15日)の取組後に若嶋津さんの妻で元歌手のみづえさんから悲報を聞き「信じられなかった」。一気に悲しみがこみあげたが、「土俵に上がったら相撲を取るだけ」と必死に気持ちを切り替えた。

 入門時の恩義がある。一山本は中大卒業後に北海道・福島町役場勤務を経て、23歳で角界入りした元公務員力士。新弟子の年齢制限緩和適用第1号として、当時の二所ノ関部屋から17年初場所初土俵。チャンスをくれたのが若嶋津さんだった。

今も「拾ってもらった」と深い感謝を忘れない。

 19年5月の新十両会見に同席した若嶋津さんは「とにかく引かないことだ。前に出れば、三役に上がれる」と背中を押した。当時は130キロ弱となかなか体重が増えず、ごはん2杯で満腹になっていた弟子を「もっと食べろ」と心配もしてくれた。一山本の最高位は今年初場所の東前頭筆頭。この日の支度部屋では「(技術指導の)一言一言に重みがあった。三役を目指してしっかりやっていきたい」と、先代師匠との約束を思い返した。

 葬儀は春場所後の24日に千葉・市川市で営まれる。155キロになった一山本は「少しでも恩返ししたい」。4勝5敗と黒星は先行したが、大阪の土俵で負け越すわけにはいかない。(山田 豊)

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