ロックバンド「銀杏(ぎんなん)BOYZ」の峯田和伸(48)がミュージシャンと俳優の二刀流で活躍している。10歳でザ・ブルーハーツに魅了されて以来、ありのままの姿で音楽を表現するパンクロックに熱中。

ドラマや映画では人情味のある役柄を得意とする。若葉竜也(36)とダブル主演した映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」(田口トモロヲ監督、27日公開)ではカメラマン役を演じた。(有野 博幸)

 大きな瞳に素朴で温かい語り口。峯田は、表現者としての原点であるブルーハーツとの出会いを昨日のことのように覚えている。

 当時、山形県の小学4年生だった。「友達の家に遊びに行ったら、中学生のお姉ちゃんがフライパンでソーセージを焼いてたんです。それをパンに挟んで、辛子を乗っけて、おしゃれな食い方をしてたんですよね。それ(=ホットドッグ)を食べながら『これ知ってる?』って持ってきたのが、ブルーハーツのセカンドアルバム『YOUNG AND PRETTY』です」。収録曲「キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー)」を聴いた瞬間、人生が決まった。

 それ以来、「歌詞が良くて歌い方も格好いい」とブルーハーツに夢中になった。「田舎で情報が少ないから、ブルーハーツが歌番組に出た時、家族に『静かにしてくれ!』と言って、テレビにカセットレコーダーを近づけて録音しました。実家が電器屋だから、古くなったラジカセをもらって、何度も聴きました。

そのカセットテープ、まだ実家にありますよ」

 スマホもサブスクもなかった昭和の時代。「自分から情報をつかみにいった。だから、最近のことより、40年前のことの方がよく覚えているんですよね。今は便利だけど、情報があふれている。あの時代が良かったな」。青春時代の憧れは一生もの。自身もロックミュージシャンとなり、音楽誌の企画でブルーハーツの甲本ヒロト(63)と対談する企画があったが、緊張し過ぎて舞い上がったことも懐かしい思い出だ。

 大学進学に合わせて上京した。親には卒業したら山形に戻り、家業の電器店を継ぐ約束をしていたが、大学では仲間とロックバンド「GOING STEADY」を結成。「ツアーをやったりして、授業を休んで留年しそうになって、親に言わなくちゃいけなくなった」。意を決して、実家に「実はバンドに熱中していて…」と電話で伝えると案の定、「ふざけるな! 電器屋はどうするんだ?」と激怒された。

 「あと3年、待ってください。

それで結果が出なかったら山形に帰ります」と懇願。「もし失敗したら、山形に帰らないといけない」と一層、バンド活動に熱中した。それから30年、今も情熱は衰えない。「ちょっとは曲作りのコツをつかんできたけど、もう48歳だから、20代みたいに恋愛できないし、作詞のもとになるネタがなくなってきた。音楽の経験値とネタが見事に反比例です」と笑う。実家は弟が継ぎ、今も地元で親しまれている。

 曲作りでは「シリアスになりすぎず、笑いの要素を1割入れるのが好き。1割の軽さを意識していますね」。現在は「自分のバンドで6年、アルバムを出せてない。新曲を書いて、早くレコーディングをしないと」と意欲的。「今まで以上にちゃんとやらないといけない。そういう責任感は増しています」と気を引き締めている。

 田口トモロヲ監督(68)の「アイデン&ティティ」(2003年)で映画初出演にして主演で俳優デビューした。「役者っぽくなろう」と自分なりに台本を読み込み、撮影に向かうと田口監督から「お芝居をしようと思わなくていいよ」と言われた。

 「その言葉がずっと心に残っています」。胸に秘めて、その後も多くの映画、ドラマに出演。17年度前期のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」(有村架純主演)でビートルズ好きの小祝宗男を好演して、一気に知名度を上げた。

 マルチに活躍しているが、「区役所では手続きをする時、職業の欄に『歌手』と書きますね。『俳優』とは書けない」。意識の違いについて「音楽は僕が作詞作曲したり、リーダーだったり、主導でやることが多い。それに対して、役者としては、監督さんや共演者の方々に身を預けて、好きなように料理してもらう感じ(だから)」と説明した。

 「ストリート―」では田口監督と再びタッグを組んだ。演じるカメラマンのユーイチが、カリスマバンド「TOKAGE」のモモ(若葉)、ミニコミ誌を手掛けるサチ(吉岡里帆)らと交流。初めて自分たちの力でレコードを完成させると、歓喜のあまり、東京の街を全力で駆け抜ける。

その疾走感のあるシーンは大きな見どころだ。

 「僕、48年生きてきて、あんなにはしゃいで女性と走ったことないですよ。本当に生きていて良かった。『吉岡里帆と一緒に東京を走った』って一生の思い出になる。撮影では、角度を変えて何度も撮るから息が切れて『おいおい何回、走らせるんだよ』と思ったけど、あんなに楽しくて最高の夜はなかった。あ~東京に出てきて良かった~」

 「自分の音を鳴らせ。」という副題がつけられている。売れるために音楽をやるのではなく、あくまで自分らしく表現する。それがパンクロックの精神だ。

 「答えじゃなく、疑問をくれる映画。『果たして君たちはどうなんだ?』と突き付けられる。音楽に詳しくなくてもいいので、何か息苦しさを感じている人、現状に満たされていない人にも見てもらいたいです」

 ◆「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」 「東京ロッカーズ」と呼ばれたバンドマンたちがインディーズ、自主レーベル、オールスタンディングなどの概念を確立し、日本ロック界に革命を起こした1978年のムーブメントを描く。峯田は「音楽をやっている僕たちから見れば、彼らは幕末の志士。

坂本龍馬みたいな存在」と敬意を表した。吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗らも出演している。

 ◆峯田 和伸(みねた・かずのぶ)1977年12月10日、山形県生まれ。48歳。大学時代にバンド「GOING STEADY」を結成して音楽活動を始め、2003年に解散し「銀杏BOYZ」を結成。同年俳優デビュー。16年にNHK「奇跡の人」で連ドラ初主演。主な出演作に映画「色即ぜねれいしょん」、ドラマ「宮本から君へ」「高嶺の花」など。

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