宝塚歌劇団で歴代最長の12年間、トップ娘役をつとめた女優・花總まりが新境地を開いている。東京公演は22日に最終日を迎える韓国ミュージカル「破果(パグァ)」で、初老の殺し屋・爪角(チョガク)を体当たりで見せる。

 同タイトルの原作(岩波書店)は韓国の女性作家ク・ビョンモ、小山内園子訳のノワール小説。第15回(2024年)の翻訳ミステリー大賞作で、内容を象徴する老いた女性の手の甲と伸びた爪がアップになった表紙も強烈な印象を与えた。映画版では、韓国の大女優イ・ヘヨンが迫真の演技で複数の主演女優賞を受賞している。

 花總といえば「エリザベート」「マリー・アントワネット」のタイトルロールを始め、高貴な役に定評がある。それが今作では激しいアクションもある別世界。最初にこの役を演じる決意をしたことを評価するべきだろう。製作発表時から「ストーリーを知り、即決で『やりたい』と。まさかこの時期に新しいイメージの役が巡ってくるとは」と話している。

 共演者との格闘シーン、銃を扱う場面もある。先の稽古場取材では「これを機に特技欄に『アクション』と書けるようになりたい」とも話していたが、相当練習を積んだことをうかがわせた。歌唱力は安定している。

 しかし、難しい役だ。

役の本質は派手な動きにあるのではない。無敵だった殺し屋が現役を続けながら、逃れられない心身の老いにいかに向き合おうとするのか。その葛藤を深く伝えなければこの舞台は成立しない。花總のこれまでの当たり役は天性でなく、悩んで練り上げられた末に生まれたものだ。今回の役も末永く演じ、完成度を高めてもらいたい。大阪・梅田芸術劇場メインホール(27~29日)、福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール(4月4、5日)でも上演。(内野 小百美)

編集部おすすめ