大相撲春場所14日目(21日、エディオンアリーナ大阪)

 関脇・霧島(29)=音羽山=が14場所ぶり3度目の優勝を決め、大関復帰の可能性が高まった。大関・安青錦(21)=安治川=の下手投げに屈して2敗目を喫したが、3敗で追っていた横綱・豊昇龍(26)=立浪=、西前頭5枚目・琴勝峰(26)=佐渡ケ嶽=がともに敗れた。

優勝争いの対象力士が3人以上で、14日目にそろって土がついてのV決定は年6場所制となった1958年以降で初の珍事。春場所は大荒れの結末になった。

 誰も予想できなかった春の珍事で、霧島に3度目の優勝が転がり込んだ。安青錦に敗れ、2敗に後退した負け残りの土俵下。3敗で追走していた豊昇龍が、結びで琴桜の外掛けに屈した瞬間、身を乗り出すようにして立ち上がってV決定を確認し、花道に向かった。テレビインタビューでは涙ぐむ場面もあった。「いろいろなことを経験してからの優勝だった」と喜びをかみしめた。ただ、拍子抜けの結末には「負けちゃった」と苦笑い。支度部屋では付け人を抱きしめた。

 取組前には同じく3敗の琴勝峰も敗れていた。霧島は勝てば自力で優勝を決められる優位な状況だった。左を差して右上手をつかんだが、低い姿勢が持ち味の安青錦は動かなかった。

逆に右上手を許して振り回されると膝から崩れ落ちた。八角理事長(元横綱・北勝海)は「硬かった。安全に勝ちたい気持ちがあった」と重圧を思いやった。

 年6場所制となった1958年以降、V争いの対象者3人以上が総崩れして14日目に賜杯が決まった例はない。霧島は最後まで驚きを隠せず「過去2度の優勝は自分で勝って決めた。負けての優勝は初めての経験」と思わず吐露した。

 一昨年夏場所を最後に大関から落ち、大の里や安青錦らの台頭で影は薄くなった。重圧を感じると考え込む癖を封じるため同じモンゴル出身で師匠の音羽山親方(元横綱・鶴竜)から「勝ちにいくのではなく、勝負にいけ」と厳しく指導された。心身を入れ替え、「自分の中ではすごく頑張っているという思いがある」と闘志はよみがえった。

 優勝したことで大関復帰にまた前進。昇進問題を預かる日本相撲協会審判部は、表彰式が行われる千秋楽の22日に臨時会議を開き、協議することになった。審判部の高田川部長(元関脇・安芸乃島)は「千秋楽を見てから」と大関・琴桜戦を注視する考えだが、昇進の目安は三役で直近3場所33勝。

霧島は1場所目が東前頭2枚目で11勝でも、同部長は「当たった相手が(三役と)一緒だから」と起点になっていると説明。先場所は関脇で11勝し、今場所は14日目を終えて12勝で、計34勝をマークしている。優勝についても「大きいですね」と高く評価した。

 再昇進となれば、現行のカド番制度となった69年名古屋場所以降、降下した場所で10勝以上を挙げての復帰を除くと魁傑、照ノ富士に次いで3人目となる。「まだ明日がある」と霧島。20代最後の千秋楽で勝ち、文句なしに大関の座を取り戻す。(山田 豊)

 ◆14日目に対象力士が総崩れでの優勝決定 年6場所制となった1958年以降で過去1度。82年名古屋場所で1敗の千代の富士が隆の里に敗れたが、直後に若乃花が琴風に敗れ、千代の富士の優勝が決定。3人以上が対象では例がない。

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