◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 2月のミラノで、フィギュアスケートの坂本花織が最後の五輪を終えた。日本で、テレビの前で見入った。

手には汗。自然と力が入った。初取材は2016年の近畿選手権だった。ジュニアながらシニア顔負けのトークに引き込まれた。話題は食生活での奮闘にも及んだ。近年はバランス良い食習慣を送っているが、当時は16歳。「カレーライスも丼ものも上だけ。いつおデブさんになってしまうか分からへんから」。けらけら笑う姿が愛らしかった。

 スピード感あふれるスケートは言わずもがな。年々磨きがかかる表現力は努力のたまものだ。喜怒哀楽に富んだ飾らない人柄は、世界女王になってからも変わらない。

昨年末の全日本選手権。所属先の応援企画として東京・表参道駅に直筆の「決意の手紙」が公開された。目にしておきたくて、開幕前日に代々木体育館から向かった。途中、坂本とすれ違った。「今行ってきてん。場所分かる? あそこの大きい看板あるやろ。その向かいの横断歩道渡って階段下りて、右に曲がって…」。イルミネーションがきらめく表参道で足を止めたオリンピアンは、身ぶり手ぶり全開で最短ルートを教えてくれた。

 3度目の五輪を戦い抜いた。団体ではリーダーシップを発揮し、チームを一つにした。個人でも2大会連続のメダルを手にした。「奇跡のような銅メダルから、これだけ銀メダルで悔しいと思えるぐらい成長できた」。

大粒の涙とともに発した言葉こそ、この4年の歩みそのものだったように思う。25日に開幕する世界選手権が最後の試合になる。悔いなく坂本らしく。そう願うだけだ。(ゴルフ担当・高木 恵)

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ)98年入社。ゴルフ担当と4度の五輪取材(リオ、平昌、東京、北京)を経て編集委員。

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