より良い条件を求めて選んだはずの転職先で、「思っていたのと違う」と感じる―。介護業界ではそんな声が少なくない。

人手不足が続くなかで転職のハードルは下がる一方、入職後に生じる期待と現実のギャップが、定着を難しくしている実態が浮かび上がってきた。

 株式会社ピーアール・デイリーが、介護職への転職経験者1,008人(20~60代)を対象に行った調査によると、転職理由の1位は「給与・待遇改善」で36.8%。続いて「職場・労働環境の改善」(30.1%)、「休暇・シフトの改善」(21.2%)と、“働きやすさ”を求める動機が並んだ。実際、転職者の約半数は介護職から介護職へ移っているが、44.3%は異業種からの参入で、業界が一定の受け皿として機能している側面もうかがえる。

 転職活動は現職と並行して進めるケースが主流だ。「就業中」に活動を始めた人は67.1%にのぼり、収入を維持しながら次を探す現実的な判断が透ける。一方で、応募先選びで重視されたのは「通勤のしやすさ」(53.2%)が最多で、「給与」(47.8%)や「休日・休暇制度」(40.5%)が続いた。日々の負担を減らし、生活と両立できるかどうかが重視されている。

 ただし、事前に知りたかった情報として最も多かったのは「昇給や賞与の実際の金額」(34.4%)だった。求人票に記載される条件と、実際の運用との間に差がある可能性を、多くの転職者が意識している。加えて「夜勤の頻度や休日希望の通りやすさ」(24.8%)、「人員体制」(14.5%)など、現場のリアルに関わる項目も上位に並び、表面的な条件だけでは判断しきれない難しさがある。

 その難しさは、転職活動中の悩みにも表れる。

「自分に合う職場の見極め」が32.1%で最多となり、「情報収集」(18.0%)、「自己分析」(9.8%)と続いた。選択肢は多くても、実態が見えにくいことで判断が難しくなる構図だ。

 入職後の評価は一様ではない。満足した点では「労働条件・待遇」(26.3%)、「職場環境・人間関係」(24.6%)、「業務内容・やりがい」(18.3%)が上位に挙がり、改善を実感するケースも一定数ある。一方で、ギャップを感じた点でも「労働条件・待遇」(37.7%)がトップとなり、「業務内容・やりがい」(31.2%)、「人間関係」(29.1%)が続く。期待と現実のズレは、同じ項目で生じていることが特徴的だ。

 長く働くうえで重視されるのは「昇給や賞与の実額」(33.4%)、「シフトの組み方」(24.7%)、「人員体制」(17.5%)。いずれも日常の負担や将来の見通しに直結する要素であり、制度の中身が問われている。転職経験者からの助言でも、「人間関係の確認」「職場の雰囲気の把握」「見学の重要性」など、現場を自分の目で確かめることが繰り返し挙げられた。

 条件は数字で示されるが、働きやすさは現場にしかない。介護職の転職において問われているのは、求人情報の量ではなく質、そして見えない部分をどう可視化するかだ。ミスマッチを減らすための鍵は、制度の整備だけでなく、「実態をどう伝えるか」という情報のあり方にあるのかもしれない。

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