将来の夢は、時代を映す鏡だと言われる。だが最新の調査を読み解くと、変わっているようで変わらない、そんな微妙な輪郭が浮かび上がる。

第一生命保険株式会社が全国の小中高生と保護者3000組を対象に実施した「大人になったらなりたいもの」調査は、子どもたちの価値観が安定と挑戦の間で揺れている現状を示した。

 小学生ではその傾向が象徴的だ。男子は「会社員」が6年連続1位を維持しつつ、「野球選手」が「YouTuber/動画投稿者」を上回り2位に浮上。背景には米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手のように世界で活躍するスターの存在がある。一方女子は「パティシエ」が6連覇を達成し、「幼稚園の先生/保育士」も上位に復帰。いずれも「誰かを喜ばせたい」という実感に根ざした動機が目立った。

 中学生になると、夢の語り口は一変する。スポーツや創作への憧れを残しつつ、「会社員」「公務員」といった現実的な職業が意識され始める。「特に理由はない」「まだ決まっていない」といった回答が増え、進路選択の重みが早くも影を落とす。女子で「薬剤師」が2位に入ったのも、専門性や安定性への関心の表れだろう。

 高校生ではさらに現実との接点が濃くなる。男子では「投資家」が初めてランクインし、「社長/起業家」も上位を維持。

金融教育の広がりやSNSを通じた情報接触が、経済への関心を後押ししているとみられる。実際、日本の金融教育経験は7%(米国20%)、知識への自信も12%(同71%)にとどまるというデータもあり、教育の変化が意識の変化に直結している側面がうかがえる。

 同時に、子どもたちの日常には別の変化も入り込んでいる。生成AIの利用は約25%が日常的と回答し、用途は「調べる」「勉強」が中心。中高生女子では「悩み相談」も増えている。保護者の75%がAI活用に肯定的である一方、思考力低下や情報の正確性への懸念も根強い。

 興味深いのは、「生まれ変わりたいもの」で「自分」が1位となった点だ。他者への憧れと同時に、今の自分を肯定する感覚も広がっている。会社員という安定志向、野球選手や投資家といった挑戦志向、そのどちらも抱えながら、子どもたちは現実的に、そして静かに未来を選び始めている。

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