将棋の藤井聡太王将=竜王、名人、王位、棋聖、棋王=に永瀬拓矢九段が挑戦する第75期王将戦七番勝負第7局が26日、大阪・高槻市の関西将棋会館で前日から指し継がれ、先手の藤井が89手で勝利。棋戦5連覇を果たした。

 1勝3敗の瀬戸際から3連勝で大逆転防衛だ。1日目の序盤、後手の永瀬が40手目で7筋の歩を突いて戦線を開いた。「今まで考えたことがなかった」と研究パートナーでもある挑戦者の一手に内心驚いた。さらに56手目で馬を作られて「かなり判断の難しい展開」と唇を結んだ。小考の末、3筋の歩を突いて後手陣の急所を攻めて「際どいですけれど、楽しみのある局面」に変えた。これに永瀬は174分の大長考の末に封じ手。一気に潮目が変わり、一夜明けたこの日は横綱相撲で突き進んだ。

 20度目の登場となった七番勝負で、フルセットにもつれるのが初めてなら、第3局時点で負け越すのも初めて。五番勝負も含め、第3局で1勝2敗となったタイトル戦は2シリーズしかないが、いずれも失冠していた。「(シリーズの)途中では『防衛…厳しいのかな』と感じるところもあった。どちらかと言えば“不思議な気持ち”というのが今の実感に一番近いと思います」。弱気の虫が顔を出していたことを打ち明けた。

 無理もない。「第5局(今月9日)の前に、棋王戦の第3局(同1日)と叡王戦のトーナメント(同5日)でいずれも敗れてしまったので、第5局に臨む上でも自信の持てる状況ではないと思っていたんです」と告白し、メンタルが低下していた当時を振り返った。それでも「苦しさを感じる局面もあったんですけど、1勝を返したことで、気持ちとしても上向きに、より良い状態で(第6局以降に)臨めたのかなと思います」と勝利が最大の良薬となり、平常心を取り戻した。

 これで七番勝負は全て戴冠。前述の通り五番勝負では2度の失冠(24年の叡王戦、昨年の王座戦)があるものの、長丁場での全勝神話を継続した。「結果として防衛できたことをうれしく思いますし、幸運でもあったかなと感じています」。会見前に、妹弟子の今井絢女流初段から花束を贈られて目尻を下げた。29日には中2日で棋王戦第5局が控える。こちらも1勝2敗からタイに戻しているだけに、“Wカド番防衛”といきたいところだ。

 【記録】藤井が第4局を終えた時点で1勝3敗から3連勝で防衛。過去にタイトル戦七番勝負で1勝3敗から逆転で戴冠したのは

66年王将戦 大山康晴 ●〇●●〇〇〇 山田道美

82年王将戦 大山康晴 ●〇●●〇〇〇 中原誠

90年王将戦 米長邦雄 〇●●●〇〇〇 南芳一

92年名人戦 中原誠  ●●〇●〇〇〇 高橋道雄

08年竜王戦 渡辺明  ●●●〇〇〇〇 羽生善治

09年王位戦 深浦康市 ●●●〇〇〇〇 木村一基

26年王将戦 藤井聡太 ●〇●●〇〇〇 永瀬拓矢

 藤井で7例目。王将戦では36年ぶり4例目の大逆転劇となった(90年王将戦は挑戦者・米長のタイトル奪取。

他はタイトル防衛)。

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