観光需要の回復が続くなか、旅館・ホテル業界は表面上の好調さを取り戻している。2025年度の市場規模は6.5兆円に達し、過去最高を更新する見通しだ。

これは、帝国データバンクが全国の約3800社の業績データなどを基に分析した結果で、インバウンドの拡大や国内旅行・出張需要の回復、大規模イベントの追い風を背景に、4年連続の成長が見込まれている。

 実際、全体の32.4%が増収となり、東京では54.1%と過半が前年を上回った。大阪や京都などでも観光客集中により需要がひっ迫し、客室単価の高止まりが続く。さらに、地方でも「ローカル体験」を求める訪日客の増加が宿泊需要を下支えし、素泊まりやオールインクルーシブといった商品設計の変化が客単価向上につながるケースも出ている。

 しかし、同調査では明暗も浮き彫りになった。減収企業は2年連続で1割を超え、インバウンドを取り込めない地域や立地条件の弱い施設では稼働率が伸び悩む。値上げによる客離れへの懸念からコスト増を吸収できず、人手不足や大手チェーンとの競争に押される構図も目立つ。

 より深刻なのが財務面だ。債務超過企業は28.6%と約3割に達し、コロナ禍前よりも高い水準にある。需要回復の一方で、過去の借り入れ負担を引きずる中小事業者は多く、設備投資や改修に踏み出せないまま競争力を落とすリスクを抱える。

 今後もインバウンド需要は高水準が見込まれるが、原油高による航空運賃の上昇や国際情勢の不確実性といった下振れ要因もある。加えて、国内では節約志向が強まり、価格だけでなく“価値”で選ばれる時代へと移行しつつある。

 市場は拡大している。それでも収益は誰にでも行き渡るわけではない。調査データが示すのは、立地や規模、投資余力といった差がそのまま競争力となる現実だ。業界は今、“伸びる市場”の中で選別が進む局面に入っている。

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