世界最大の格闘技団体「ONE Championship」は31日、東京・文京区の宝生能楽堂で「ONE SAMURAI キックオフカンファレンス」を行った。

 「ONE SAMURAI」は、MMA、ムエタイ、キックボクシング、サブミッショングラップリングの各競技で、日本の人気格闘家と次世代アスリートが参戦。

また、世界最高峰の国際的スーパースターも出場し、各イベントで複数の世界タイトルマッチが行われる。

 新シリーズの旗揚げ戦となる「ONE SAMURAI 1」は4月29日に有明アリーナで行われる。同大会のメインイベントは、今大会での引退を明言している元K―1世界3階級制覇王者の武尊が昨年3月23日にさいたまスーパーアリーナで1回1分20秒、KOで敗れたロッタンと再戦する。

 この一戦は、武尊が再起戦となった昨年11・16「ONE 173 スーパーボン VS 野杁」でデニス・ピューリック(カナダ/ボスニア・ヘルツェゴビナ)をTKOで破ったリング上で次戦での引退を宣言。ラストマッチの相手にロッタンを指名しロッタンも受諾。チャトリ・シットヨートンCEOが4月29日に有明アリーナで開催予定の「ONE175」(後に「ONE SAMURAI」に大会名は変更)での対戦を明言した。

 そして、「ONE」は両者の対戦を2月27日に公式「X」などで「フライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦」として行われることを発表した。

 発表時に公式WEBなどで「ロッタン vs 武尊」が「暫定世界王座決定戦」となった経緯は説明されていなかった。

 「ONE」はチャトリCEOが会見などで繰り返し野球、サッカーなどと同じプロの競技スポーツとしての「格闘技」を目指すと明言している。競技スポーツで最も重要なことはすべての選手に公平で公正であることと大衆へ公明正大であることは言うまでもない。すべての競技スポーツはルール、規約に基づいて試合は実施され運営されている。

 「ONE」もチャトリCEOのこれまでの発言からこうした競技スポーツの原則の下で運営されていると捉えていたが、格闘技にとって最も重要な「タイトル」しかも「世界王座」について実現に至った経緯が公開されていなかったため、め私は記者会見でチャトリCEOへ「暫定世界王座決定戦」に至った理由を聞いた。

 その中で私の疑問は3点だった。ひとつめは、フライ級キックボクシングの正規王者であるスーパーレック・キアトモー9は、2024年1月28日の武尊戦を最後に防衛戦を行っていない。しかも、その後、ムエタイでバンタム級に階級を上げ世界王座を奪取(現在は陥落)している。正規王者が2年あまり防衛戦を行っていない状況であれば、王座を剥奪し「ロッタン vs 武尊」は暫定ではなく正規王者決定戦にすべきではないか?と思った。この疑問にチャトリCEOは、こう答えた。

 「数週間前にスーパーレック選手とは直接、話をさせていただきました。そしてスーパーレック選手は、2つのカテゴリーの2階級のチャンピオンになりたいという思いがあるということも聞いております。フライ級では今、体重を合わせられるかというところにも不安がありますし、そして彼はフライ級のキックボクシングでのタイトル防衛というところにも視野に置いています。また、バンタム級に階級をという話もありますので、今は今回、ロッタン選手と武尊選手が暫定王座決定戦ということになりました」

 2つ目の疑問は、暫定王座決定戦に出場できる資格は、プロスポーツである「ボクシング」では原則的にランキング1位と2位の選手になる。ところが「ONE」には、公式WEBの「アスリート・ランキング」で「格闘技ファンの皆さま、ONE Championshipは2026年、全72大会の開催とともに、刷新されたアスリートランキングを導入します」と告知しているだけでランキングがない状態となっている。この状況でなぜ、ロッタンと武尊の両者へ暫定王座決定戦へ出場する許可を出したのか?この問いへのチャトリCEOの回答は以下の通りだった。

 「ランキングに関してなんですけれども、4半期に一回アップデートされているんですけれども、実は直近でONEチャンピオンシップと新たに契約をした選手がおりまして、そういったところも含めてのアップデートが今後される予定になっております。

また、年間、ONEチャンピオンシップでは何十回大会がありますので、今後メディアの方々からも参加ができるような広く参加型の投票でもってランキングというものが決められるようなシステムもこれから始まりますので、そういったところも含めて、もうしばらくお待ちいただければと思います」

 3つ目は、武尊は、ロッタン戦を引退試合になると明言している。この日の会見でも繰り返し4・29有明で引退することを断言した。つまり、ロッタンを破ってタイトルを獲得しても即、返上することになる。言うまでもなくあらゆるファイターは、ベルトを腰に巻くことを目標に日々、過酷な練習を課している。初めからタイトルを返上することが前提となっている選手に王座決定戦を認めることは、タイトルの権威、価値が揺らぐことにはならないだろうか?

 この質問にチャトリCEOが会見で触れることはなかったが、会見後の囲み取材で別の記者が「武尊選手が勝ったらベルト持ったまま引退することになります。それは仕方がない?」と問われ「勝ったら気持ちあるかもしれない。スーパーレック、本当のチャンピオンだから」とし「これは見ましょう」と苦笑いし「武尊勝ったら…でも武尊の気持ちは100パーセント引退する」と明かしていた。

 (取材・執筆 福留 崇広)

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