春、新しい部屋に荷物を運び込むとき、人は何を優先するのか。冷蔵庫やカーテンはすぐに揃えるのに、いざという時の準備は後回しになりがちだ。

そんな日常の隙間に潜む備えの偏りが、ひとつの調査から浮かび上がった。

 株式会社スマテンが2026年3月27日に実施したインターネット調査(全国の男女70人)によると、新生活における防災準備では「飲料水」が87.14%と最も高く、「非常食・レトルト食品」74.29%、「懐中電灯・多機能ライト」74.29%、「現金」72.86%と続いた。生存に直結する備蓄品の重要性は広く認識されている一方、「給水袋」55.71%や「カセットコンロ」50.00%など、生活再建に関わる項目はやや低調だ。

 持ち出し品でも傾向は似る。「懐中電灯・多機能ライト」74.29%、「現金」72.86%が上位を占め、「携帯用トイレ」58.57%や「モバイルバッテリー」55.71%といった実用性の高い品も半数を超えた。一方、「防災用ヘルメット」44.29%や「ホイッスル・防犯ブザー」37.14%は優先度が下がり、緊急時の安全確保よりも生活維持への意識が強いことがうかがえる。

 住まいの対策では「家具の転倒防止」71.43%、「ハザードマップの確認」70.00%と一定の理解があるものの、「ガラス飛散防止フィルム」は47.14%にとどまった。さらに「家族との安否確認ルール」61.43%、「室内履きの準備」55.71%など、日常に近い対策ほど実施のばらつきが見られる。

 調査結果から透けるのは、防災が点で捉えられている現状だ。災害は発生直後、避難時、その後の生活再建と局面が移る。それぞれに必要な備えは異なるが、実際の意識は特定の領域に偏りがちだ。新生活という節目は、本来それらを見直す好機のはずだが、現実は十分に活かされていない。

 家具の固定や飛散防止といった室内対策、持ち出し品の整備、そして在宅避難を見据えた備蓄——これらを横断的に整える発想が求められている。数字が示すのは、備えているつもりと、実際の備えのあいだにあるギャップである。

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