6月11日(日本時間12日)開幕のサッカー北中米W杯に向けた連載「世界一の景色へ」の第2回では、ベルギー1部シントトロイデンで2018年から最高経営責任者(CEO)を務める立石敬之氏(56)にインタビュー。今、所属する8選手を含め、これまで28人の日本勢が在籍した。

現在の森保ジャパンのセンターラインには“シント組”が多く名を連ねる。日本サッカー界に大きく貢献している立石CEOが、クラブの歩みと史上最強と称される日本代表への思いを語った。(取材・構成=後藤亮太)

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 ベルギーの首都ブリュッセルから東へ約60キロ、人口4万人の地方都市にシントトロイデンはある。日本のネット関連企業「DMMグループ」が17年に経営権を取得し、「世界で戦う日本サッカーの強化に貢献したい」という思いを胸に、立石氏が18年1月にCEOに就任。1期生のMF遠藤航、DF冨安健洋、MF鎌田大地から始まり、日本人のビッグクラブ移籍への登竜門となり、現在所属の8人を含め、28人がユニホームに袖を通した。

 「今でこそ欧州に日本人選手が150人位いますが、僕が来た時、ベルギーには1、2人。そういうムーブメントはシントトロイデンが作ったんじゃないかな」

 そう自負するのもうなずける。今回の英国遠征に臨む日本代表にDF谷口彰悟、FW後藤啓介が招集され、かつて在籍したGK鈴木彩艶、DF橋岡大樹、MF鎌田、藤田譲瑠チマ、中村敬斗を合わせると7人が“シント組”。ケガで不参加となったDF冨安、離脱中のMF遠藤も含め、わずか8年で一大勢力となった。

 「こんなに順調にいくとは思わなかった。代表の食事会場でも『シント組はテーブル一緒か』と話題になるみたい。関係者から聞いた話によると、鎌田も『僕は高卒で、大学の派閥とかはないけど“シント組”になるんですかね』と冗談を言ったみたいで。

人数はある一定の所まできたかな」

 強くなるための一貫した狙いもある。中盤の遠藤、鎌田、藤田、センターバックの谷口、冨安、GKの鈴木彩に、20歳のセンターFW後藤など、当初から立石CEOは中央のポジション強化を意識していた。

 「センターラインを取りたかった。GK、センターバック、センターFW…特にエリア内でプレーするGKとFWが勝負を一番決める。日本の課題はそこかなと。強い国には決定的な仕事をする選手と、決定的に守れる選手がいる。それはいつの時代も変わらない」

 ドイツ、フランスと隣接し、強豪クラブの目にも留まりやすいベルギーリーグで存在感を放つと、クラブの立ち位置も変化した。

 「バリューがすごく上がった。単純に選手に対するオファーの金額が違う。1人の選手で200万ユーロ(約3億7000万)だったのが、今は7、800万ユーロ(約12億8000万~14億6000万)。だからシントトロイデンの選手は価値が高い」

 クラブが右肩上がりの曲線を描いてきたのと比例して、日本代表も世界との距離を縮めてきた。立石CEOも「今までで間違いなく一番強いチーム」と言う。

では森保ジャパンが掲げる「W杯優勝」の可能性は。

 「0%ではないと思います。何%かは間違いなくあって、そこに全員が懸けている。コンディションや分析などの総合力が問われるが、全部うまくいけばチャンスはある。ただ、70、80%ではなく、高めたところで30%…それでも、その30%が今まではなかったから、すごく(可能性は)大きい。(シント組には)みんな期待しているし、みんな頑張ってほしいですね」

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 〇…今季クラブはGK小久保、DF谷口、畑、MF伊藤、山本、FW後藤らが主力となってレギュラーシーズン3位と躍進し、DMMが経営権を取得後初めて上位6チームによる4月からのプレーオフ1出場が決定。優勝すれば欧州最高峰のチャンピオンズリーグ出場権を獲得できる。立石CEOは「夢の舞台。欧州の大会にフロントの人間が出ていける時代が来れば、自分だけじゃなくて、日本サッカー界にとっては大きな前進だと思う」と強調。夢をかなえ、クラブも更なるステップアップを遂げる。

◆立石 敬之(たていし・たかゆき)1969年7月8日、北九州市生まれ。56歳。

現役時代は平塚(現湘南)、東京ガス(現FC東京)、大分などでプレー。99年に現役引退後は大分のコーチや強化部長を歴任。07年からはFC東京で強化部長やゼネラルマネジャー(GM)を務めた。18年にシントトロイデンのCEOに就任。

◆シントトロイデン 1924年、ベルギー・シントトロイデン市内の2クラブが合併して創立。本拠地は「大王わさびスタイエン・スタジアム」(収容1万4600人)。17年11月に日本のネット関連大手「DMMグループ」が同クラブの株式を買収し、経営権を取得。クラブカラーは黄と青。

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