◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 インタビューをしていると、たまに使うことのある質問がある。「当時の自分に、今の自分が声をかけてあげられるとしたらどんなことを言いますか?」

 この場合の「当時」はケース・バイ・ケースで、アイドルが人気絶頂で多忙を極めていた時期であったり、私生活の問題で自粛することになった時期などさまざま。

いたわりの言葉、後悔の念など感情に寄った回答が出てくるので、記事が書きやすいという小ずるい狙いもあったりする。多用はしないが、脳内のストックに入っている。

 先日、ジュリーこと沢田研二がスペインの建築家、アントニ・ガウディを演じるロック音楽劇「ガウディ×ガウディ」を観劇した。ダブル主演の渡辺大知演じる若きガウディのもとに、年老いたガウディが姿を現し、不思議な共同生活が始まるという、まさに「当時の自分に…」が繰り広げられていた。老ガウディは恋愛や仕事など若ガウディに助言するが、すんなり聞き入れるわけもない。

 そのストーリーはジュリーの半生にもリンクすると感じた。1960年代、カリスマ的人気を誇る美青年として一世を風靡(ふうび)。60年の時を経て、老いも含めたありのままの自分をさらけ出しながらステージに立っている。年を重ね、一層深みが増した歌声を聴き、毎秒毎秒を本気で生きてきたであろう人に「当時の自分に…」という質問を投げかけても意味をもたないような気がした。

 翻ってその言葉は鏡のように自分自身を映す。4月、新生活のタイミング。入社20年目となったが、23歳だった自分に何を言うべきか。

適切な言葉をずっと自問自答している。(芸能担当・宮路 美穂)

 ◆宮路 美穂(みやじ・みほ) 2007年入社。10年12月から芸能担当。

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