スピードスケート女子で、今季限りで現役を引退した高木美帆さん(31)=TOKIOインカラミ=が6日、東京都内で記者会見を開いた。夏季を含む日本女子最多の五輪通算10個のメダル獲得し、日本勢初の世界選手権オールラウンド部門優勝など数々の歴史を刻んできた求道者。

約2時間の会見で今後については「全く未定」としたが、指導者よりも「脳と体の関係が面白い」と研究者に向けた道への興味を明かした。

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 黒髪を後ろでまとめ、上下白のパンツスーツ姿の高木さんは終始、晴れやかな表情で言葉を紡いだ。リモートを含め、39社111人もの報道陣が出席した会見。注目の今後については「未定」と明かしたが、現役時代から興味を持っていたことに対し「自分なりの考えを見つけていきたい」との方針を口にした。

 関心を寄せるのが「脳と体の関係」と「人の健康寿命」だという。かねて自身の集中力などに注目しており、科学的な分野の知見を高めていきたいと話した。大学院進学の予定などはないが「目の前には真っ白な画用紙が広がっている。自分の帆を目いっぱい広げて、思うままに進んでいきたい」と目を輝かせて、第二の人生への思いを語った。

 一方で、指導者などスケートに関わる思いがないことも告白した。日本スピードスケート史上最年少の15歳で10年バンクーバー五輪に出場。長年、第一線を走り続けてきたが「疲弊している部分があった」と吐露した。「スケート界に関わる話をいただいても、心がネガティブな反応をしてしまう」と再び勝負の世界に身を置くことには消極的だ。

 3月に自身のSNSで現役を退く意向を表明した。決断は1月、ドイツ・インツェルで歩いている時だったという。「自分が求めるアスリート像になりきれていない、と感じる時間が増えた。自分を押し上げていくパッションが少しずつなくなっている」。食事や睡眠など、私生活の時間も全てスケートにささげてきた。だが、22年北京五輪後は「これ以上できない、と心が悲鳴をあげている部分もあった」と近年は苦悩も多かった。引退は決断ではなく、「受け入れたという感じ」だったと語った。

 リンクに別れを告げて約1か月。いまだに実感は湧いていないがスケートに未練はない。「この決断に後悔、後戻りしたいと思うことはない」と断言。高木さんにとってのスケートを「自分をここまで作ってくれたものの一つ。私の思い出や経験として、ずっとそばにいてくれるもの」と表現した。

5歳から履き続けてきたスケート靴を脱ぎ、次のステップへと歩み出した。(富張 萌黄)

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◇美帆さんに聞く

 ―今の気持ちは。

 「自分の中で、現役を退くということに対して、すごく寂しい、ぽっかり穴が開いてしまったとは感じていない」

 ―ミラノ・コルティナ五輪を目指した4年間。

 「自分にとってかけがえのない時間になったと強く感じている。自分でチームを作ったこともそうだし、その過程で出会った方々、支えてくれた方々を思い返すと、この時間は宝物だと感じる」

 ―どんな意識を持って世界と戦ってきた?

 「レースに挑む上で一番意識していたのは、レースに優劣はあまりないということ。どのレースも全力で挑む。自分の置かれているコンディションがどんな状態でも本気で挑みにいくことを、常々意識していた。それがしんどくなってきたことは、年齢を重ねるにつれてあった。でも私は全部全力で挑みにいくことに対して、ポリシーがあった。そういう自分でありたい。そういうところを最後まで大事にできた」

 ―スピードスケート界に残せたもの。

 「それはわからないですね(笑い)。

私自身が競技に挑むにあたって、最後まで自分のスケートを一番に考えてきた。後輩の指導に時間を割いてというわけではなく、共に戦っていく中で見せられるものがあればと思っていた。その姿を見て、何かをもし受け取ってもらえているのであれば、すごくうれしい」

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