6月11日(日本時間12日)開幕のサッカー北中米W杯まで11日で、あと2か月となる。連載「世界一の景色へ」の第3回では、森保ジャパンの守護神・GK鈴木彩艶(23)=イタリア1部パルマ=の原点に迫る。
工藤氏が鈴木と初めて会ったのは小3の時。2学年上の兄が入っていた選抜チームと、工藤氏がコーチだった浦和のアカデミーが提携していたため、兄と一緒に練習場に来ていたのが彩艶少年だった。
「GKグローブを付けて、ボールを持って来ていたので、GKが好きな子なんだなと。壁当てをして、自分でボールをキャッチしていた。ユニホームが違うのがかっこいい、みたいなことは言っていましたね」
その2年後に浦和ジュニア(小5、6年)が発足すると、小5の鈴木が入団。1期生のコーチとなった工藤氏は、多くの子供と接する中で、鈴木の抜きんでた素質を振り返る。
「特別上手だったり最初からセンスの塊だったとかではない。ただ、すごく素直。アドバイスしたことをしっかりと聞く力が高かった。素直さは歴代の中でも断トツ。羨ましいですね、すごいと思う」
真っすぐな心は、スポンジのような吸収力で成長を加速させた。
「彼は努力する才能に一番恵まれている。勝負していく長所を自分で作った。それは彼にしか出来ないこと。だから努力の天才だと思う」
素直な心×努力する才能―。掛け合わされた2つの資質が、鈴木の原点。中1から中2にかけて身長が10センチ以上伸びて180センチ近くなるなど、身体面の成長も加わった。小5の時から口にしてきた「プレミアリーグでプレーしたい」という目標にたどり着くため、高校では食事のサポートを受けられる寮生活を選択し、練習場所から近い高校への進学も自分で決めた。
「全てがサッカーのための逆算で生活してきたから今がある。
鈴木は昨年11月、左手を骨折して手術したが、3日後にはトレーニングを再開した。左手が使えない期間は足元の技術、右手中心のハンドリング、視覚・反応系のトレーニングに取り組むなど、ひたむきな姿勢は不変だ。190センチ、100キロ。世界基準の体格で、森保ジャパンが掲げるW杯優勝への鍵を握る守護神。工藤氏は、大舞台に臨む教え子の活躍を願う。
「W杯は4年に一度、日本のGKのレベルが上がっていることを世界に示すことが出来るタイミング。その価値を彼が証明してくれることがすごく楽しみだし、日本のGKのステータスを上げることにもなる。きっと、そういうパフォーマンスを出してくれるんじゃないかなと期待しています」
◆鈴木と森保ジャパン 22年E―1選手権でA代表初招集、同年7月19日の香港戦(6〇0)でデビュー。同年カタールW杯は選出されず、23年10月チュニジア戦(2〇0)で海外組を含めた中で初先発以降は代表に定着。北中米W杯アジア最終予選は8試合先発フル出場。歴史的初勝利のイングランド戦は好守で1―0勝利に貢献した。
◆鈴木 彩艶(すずき・ざいおん)2002年8月21日、米国生まれ。23歳。父はガーナ人、母は日本人。小5から浦和の育成組織で育ち、19年にクラブ史上最年少の16歳5か月11日でプロ契約。21年にトップ昇格し、同5月にJ1デビュー。17年U―17W杯、19年U―20W杯、21年東京五輪代表。22年7月にA代表デビュー。23年8月にベルギー1部シントトロイデン、24年7月にパルマに移籍。名前の由来は聖書の「聖なる丘=Zion」を意味し、響きの良さから「ザイオン」。右利き。190センチ、100キロ。
◆工藤 輝央(くどう・てるひさ)1980年1月17日、東京都出身。46歳。現役時代は読売クラブの育成組織などでGKとしてプレー。00年から広島朝鮮学園サッカー部でGKコーチを務め、作陽高、大原学園JaSRA、浦和レディースコーチを経て、12年に浦和の育成組織のコーチに就任。19年からトップチームのコーチに。岐阜、仙台などでもコーチを歴任し、24年7月から現職。

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