男子テニス サラソタ・オープン (7日、米フロリダ州・ブラデントン)

 元世界ランキング4位で、現491位の錦織圭(36)=ユニクロ=が1回戦を突破した。自身が拠点とする米フロリダ州のIMGアカデミーで行われたツアー下部のチャレンジャー大会で、同344位のニコラス・キケル(33)=アルゼンチン=に6―3、6―2で勝ち、既に否定している自身の引退報道が渦巻く中、「人から引退すると聞くのは不思議な感じ」と心境を明かした。

2回戦は第1シードの呉易昺(ウ・イビン)=中国=と対戦する。

 引退騒動など、まるでなかったように、錦織は時折、ガッツポーズを繰り出しながら快勝した。自身のサービスゲームを一度も失わず、今季クレー(土)コート初戦を勝利で飾った。約1か月半ぶりの実戦だったが、「しっかり攻めたり、いいプレーができた」と手応えを感じていた。

 ただ、右肩や腰などに故障を抱えており、体は「めちゃめちゃ、いいわけではないが、試合は何とかできる。ぎりぎりで耐えている」。今後についても「一試合一試合しっかり戦って、どれだけ調子を上げられていくか。なるべく目の前の一試合に集中する」と慎重だった。

 この数週間、海外で引退のうわさが飛び交った。5日に自身のSNSで否定。この日の試合後には「人から引退すると聞くのは不思議な感じ。それだけ注目されているのはありがたい」と錦織節で苦笑いだ。

 発端は3月下旬に、海外の記者が、「錦織がサラソタ・オープンで引退する」とつぶやいたことだ。錦織が拠点とする場所が今回の会場で、主催者から聞いたというのが根拠だった。これは錦織の代理人が完全否定。その後、仏レキップ紙が同様の内容で引退を報じた。これに、錦織自身が今週での引退をSNSで否定し、「この件に関しては、自分の口からアップデートを伝える」と記した。仏レキップ紙も訂正記事を掲載した。

 昨年12月のスポーツ報知単独インタビューでは、25年を「テニス人生最大の危機」と表現。負傷とリハビリを繰り返したことから、同8月に「頭が耐えきれなくなった」と本気で引退を考えたという。それでも現役続行を決めたのは「自分の才能を、けがで終わりにするのは、もったいないというのが常にある。けがで終わるのは、一番アスリートがしたくない最悪のシチュエーション。それで終わりたくない」と語っていた。今はプレーだけに集中する。

 ◆22年フェデラーけがで引退にショック、負傷に対する反骨心も…記者の目

 間違いなく、36歳になった錦織引退の「その日」は遠くない日に来る。しかし間違いなく、それは今週ではない。けがに負ける姿だけは見せたくない。その思いで、1回戦を戦ったに違いない。心が折れる日はいつかは来るだろう。ただ、今ではない。

 「けがで引退するのだけは嫌だ」というのが、昔からの口癖だ。憧れだったフェデラー(スイス)が、ひざのけがで22年に引退した。「がっかりした。ショックだった」とぼそっと話したのが印象的だった。けがで引退するフェデラーなど見たくなかったのだ。

 16年ウィンブルドン4回戦。

試合中に左脇腹を痛め、球を追う気力も出なかった。それでも「筋肉が切れるぐらいまでやろう」と、コーチ陣の制止を振り切り、プレーを続行した。途中棄権したが、当時、体が弱いとやゆされていた錦織が見せた反骨だった。(吉松 忠弘)

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