【オーガスタ(米ジョージア州)8日=星野浩司】米男子ゴルフの2026年メジャー初戦、マスターズは9日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7565ヤード、パー72)で行われる。2021年大会覇者の松山英樹(LEXUS)ら世界中の名手たちが集い、今年で90回目を迎える年に一度の「ゴルフの祭典」。

スマートフォンや通信機器の持ち込み禁止、開幕3日前の練習日から数万人で大盛況となるゴルフの夢舞台を、マスターズ初取材の星野浩司記者が「見た」。

 世界中の記者が集まるメディアセンター。「NO CELLPHONES BEYOND THIS POINT(これより先は携帯電話禁止)」と書かれた看板が立っている。違反が発覚すれば即退場となり、今後の取材が禁止となるペナルティーもある鉄のルール。ポケットに入ったスマホを自分の席に置き、約500メートル先にあるコースへ向かった。

 観客は乗車してきた車の中に置いてくるのが一般的。どうしても“外の世界”と連絡が取りたい人々が、コース内に設置された公衆電話に列を作っていた。さらに、他の試合では当然ある電光掲示板が一切ない。選手の成績を伝えるのは、スタッフが大きな板を手動で入れ替える伝統的なスコアボードというアナログスタイルだ。

 古き良き伝統である一方で、大半の人がスマホを手放せない現代社会では不便さは大きい。だが同時に、大きなメリットを感じた。いつもはスマホ片手に下を見がちな視線は前へ、そして上へ。

選手のプレーや表情、キャディーと戦略を練る会話に耳を傾けるなど、一挙手一投足を見逃さずにノートに書き留めた。

 目の前の選手のプレーに集中できる空間。国内ツアーではよく見かける「BE QUIET(お静かに)」のプレートも呼びかけもないが、プレー時に物音を立てる人は限りなくゼロに近い。当然、着信音が鳴ることもない。一転して好プレーが飛び出すと、静寂から地鳴りのような大歓声がわき起こる。名物16番パー3では、池越えの水切りショットを求めて大声を張り上げるなど、スター選手と観客が最高のライブ空間を作り上げている。

 特に驚かされたのは、平日のギャラリーの多さだ。開幕3日前の4月6日から現地で取材をスタート。まだ月曜日なのに、大勢の観客がコースや練習場を埋め尽くした。観衆の公式発表はないが、数万人はいただろう。宿泊代は通常の数倍に高騰し、練習日の観戦チケットは路上の販売店で「1日数百ドル」で売り出されているのに、会場のファンは膨れあがる。

 観客のお目当ての1つがショッピング。

マスターズのロゴが入った公式グッズを求め、まるでディズニーリゾートのアトラクションを待つように長蛇の列が作られ、「60分待ち」の看板を持つスタッフを見かけた。キャップ30個や大量のウェアなどを爆買いしていた熱烈ファンは「値段は見てないけど、2000~3000ドルくらい買ったよ」。記者も円安の影響は重々承知しつつ、金銭感覚がバグりながら手に取ってしまった。

 最後は、ここでしか手に入らないレアなものをもらった話。7日の練習日に12番パー3で松山英樹のティーショットを撮影し終えると、スイング時に削り取られた芝「ターフ」が目の前に飛んできた。すると、そのホールの係員が「プレゼントだよ」と10数センチのターフを記者たちに手渡ししてくれた。お土産として日本に持って帰ることはできないが、オーガスタGCを訪れた人を喜ばせようとする“おもてなし”に心がほっこりした。

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