日本相撲協会は9日、都内で臨時理事会を開き、2月21日に弟子の幕内・伯乃富士に暴力を振るった伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士)に対し、委員待遇年寄から平年寄への2階級降格と報酬減額(10%を3か月)処分を決めた。部屋の師匠は交代せず、継続する。

また、酒席での女性とのトラブルが発端だったこともあり、伯乃富士も厳重注意とした。

 協会は今回の処分に至った経緯も文書で公表した。伊勢ケ浜親方の違反行為について、後援者との会員制ラウンジでの会合で、伯乃富士が後援者の知人女性の太ももを触るなどの不適切行為があったことを知り、口頭での注意と拳で左頬を一発殴り、平手で顔面を一発はたいた。一部では酒瓶を用いたとの情報も流れていたが、素手での暴行であることが明らかにされた。

 ▽協会発表全文(原文ママ)

協会員の暴力行為に対する処分について

公益財団法人日本相撲協会

年寄伊勢ヶ濱こと杉野森正山(以下、伊勢ヶ濱という。)が、同部屋の幕内力士である伯乃富士(以下、伯乃富士という。)に対して暴力を振るったことに関する処分等について、お知らせします。

(1)事案発覚時の経緯

令和8年2月23日、伊勢ヶ濱は、公益財団法人日本相撲協会(以下「相撲協会」という。)の勝ノ浦コンプライアンス部長に対して、自分自身が弟子の伯乃富士に暴力を振るったことを報告した。それを受け、同部長は翌日24日、当事者を呼んで事情を聞き、暴力行為の事実を確認したうえで、八角理事長に報告した。

(2)コンプライアンス委員会の調査結果と処分意見

八角理事長は、暴力行為が確認されたことから、同日24日、青沼コンプライアンス委員長に、事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱した。青沼委員長は、調査班を編成し調査を実施した後、以下のとおり、コンプライアンス委員会で審議した結果を八角理事長に報告するとともに、処分意見の答申を行った。

(伊勢ヶ濱について)

伊勢ヶ濱の違反行為と処分意見等は以下のとおりである。

伊勢ヶ濱は、令和8年2月21日(土)午前3時頃から、伯乃富士と同部屋の力士、後援者らと会員制ラウンジで会合した。その際に伯乃富士が、後援者の知人女性に対し、不適切な行為(太ももを触るなど)を行った。伊勢ヶ濱は、後援者の怒鳴り声を聞き、伯乃富士がその女性に対し何らかの不適切な行為に及んだことを知った。伯乃富士は、後援者の指示で、一旦、店外に出ていったが、伊勢ヶ濱は、伯乃富士が泥酔状態であり、このまま外に出すと、新たなトラブルを起こしかねないと思い、また、後援者らにきちんと謝罪をさせる必要があるとも考え、伯乃富士を店内に連れ戻させた。そして、伊勢ヶ濱は、戻ってきた伯乃富士をソファの自らの横に座らせ、同人に対し「お前、何回同じことをやらかすんだ。酒を飲み過ぎて、覚えていないじゃすまないんだぞ。分かっているのか。」などと注意した。伯乃富士は、以前にも同様のトラブルを起こし、外出を禁止されたこともあったことから、伊勢ヶ濱は、このようなトラブルが再び起きると、伯乃富士が現役を続けられなくなると心配していた。そのようなこともあり、伊勢ヶ濱は、これ以上口頭で注意しても埒が明かず、このままでは同じ失敗を繰り返すと思い、また、何らかの仕置きをしなければ後援者らに対する示しがつかず、この場を収めることもできないなどと考えた。そこで、伊勢ヶ濱は、ソファに座った姿勢で、同じく座ったままの伯乃富士に対し、拳で左頬の辺りを一発殴り、次いで平手で顔面を一発叩いた。すると、伯乃富士は、伊勢ヶ濱に対し謝罪をし、後援者に対しても謝罪した。

その後しばらくした後、解散となり、伊勢ヶ濱らは、墨田区千歳にある稽古場に車で帰った。

伊勢ヶ濱は、事の顛末を協会に対してすぐに報告しようとしたが、当日は協会が休みで、翌22日(日)と翌々23日(月・祝日)が連休であったことから、23日(月)に電話で勝ノ浦部長に対し、伯乃富士に暴力を振るった旨を報告し、翌24日(火)同部長の指示で、伯乃富士らとともに協会に出向いてヒアリングを受けた。

本件暴力は、師匠という指導者の立場にある者が弟子に対して直接暴力を振るった事案であり、暴力禁止規程に違反するとともに、親方としての自覚に欠け、到底許されるものではなく、厳しい処分が求められる事案である。しかしながら他方で、暴力の態様は、座ったまま拳や平手で合計2回顔面を殴打したにとどまり、その態様や程度が極めて悪質とまではいい難い。しかも、伯乃富士にも、同席した女性に対して不適切行為に及んだという落ち度があり、本件暴力を正当化する理由にはならないものの、これを諫めるという、相応の動機があった。また、伊勢ヶ濱には、暴力の常習性はなく、本件は単発的なものであり、日常の指導監督にも特段問題は見受けられなかったこと、本件を隠蔽することなく、自発的にコンプライアンス部長に報告していること、事実関係を認めて真摯に反省していることなど、斟酌すべき事情を併せ考慮すると、懲戒処分の降格と報酬減額を併科するのが相当と考えられるとし、青沼委員長が理事長に答申した。

(伯乃富士について)

伯乃富士の違反行為と処分意見等は以下のとおりである。

伯乃富士は、泥酔状態で同席した後援者の知人女性に対し不適切行為に及んだもので、この行為は、コンプライアンス規程の「著しく品位を欠く行為」及び賞罰規程の「協会の信用もしくは名誉を毀損する行為」に該当する。本件不適切行為は、女性の尊厳を軽視した行為であり、許されるものではない。しかしながら、伯乃富士には過去に懲戒処分歴はなく、真摯に反省している点、不適切行為を受けた女性が現在まで協会に対して伯乃富士の処分を訴えてはいない点を考慮し、今回は懲戒処分とはせず、理事長による厳重注意とするのが相当と考えられるとし、青沼委員長が理事長に答申した。

(3)理事会決議と今後の対応

本日の理事会では、伊勢ヶ濱の懲戒処分について、コンプライアンス委員会の答申通り、降格(委員待遇年寄から年寄)と報酬減額(10%を三か月)の併科とすることを決議

し、伊勢ヶ濱に処分を通知した。また、伯乃富士についても、コンプライアンス委員会の答申通り、理事長からの厳重注意とし、理事会終了後、八角理事長が伯乃富士に対して今後、同様な行為を厳に慎むよう、厳重に注意した。

なお、伊勢ヶ濱部屋の今後についても、理事会で審議を行った。

伊勢ヶ濱の暴力行為について、相応の理由があったことや、その場限りであったこと、協会に自ら届け出ていることなど、情状酌量の余地はあるものの、力士らの指導監督者である親方が暴力を振るうことは絶対に許されないことから、伊勢ヶ濱に対して継続的に指導を行う必要があると考え、当面、伊勢ヶ濱部屋を協会、一門の指導・監督下に置き、定期的に状況を確認することとした。また、伊勢ヶ濱部屋での弟子の指導については、部屋付き親方4名と伊勢ヶ濱が、協力して集団指導体制を取り、稽古場のみならず、生活全般においても、5人の親方が協力して指導・監督を行うこととした。

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