日本相撲協会は9日、都内で臨時理事会を開き、2月下旬に弟子の幕内・伯乃富士に暴力を振るった伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士、34)に対し、委員待遇年寄から年寄への2階級降格と3か月の10%報酬減額の処分を決めた。女性に対する不適切行為があった伯乃富士は八角理事長(元横綱・北勝海)から厳重注意を受けた。

師匠は交代せずに継続するが、伊勢ケ浜部屋は当面、協会と伊勢ケ浜一門の指導・監督下に置かれ、集団指導体制が取られる。

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 伊勢ケ浜親方は都内の部屋の前で、弟子の伯乃富士と並んで深々と頭を下げた。「私の責任ない行動により多くの方にご迷惑、ご心配をおかけしまして本当に申し訳ございませんでした。暴力は理由が何であれ、決して許されることではないと思います」。神妙な面持ちで、弟子に暴力を振るった自身の行為への反省と謝罪を述べた。

 協会の発表によると、2月21日午前3時頃、西麻布の会員制ラウンジでの後援者との会合での出来事だった。泥酔状態で後援者の知人女性に太ももを触るなどした伯乃富士を口頭で注意した後、拳と平手で顔面を2度殴打した。その後、協会に自ら報告。伯乃富士らと聴取を受け、待っていた処分がこの日、下された。

 臨時理事会では事実関係を調査してきたコンプライアンス委員会からの答申に準じ、2階級降格などの処分を決めた。同委員会では師匠が弟子に直接暴力を振るったことを「到底許されるものではない」と断じたが、伯乃富士にも落ち度があったこと、常習性がないことや自主申告した点などを「斟酌(しんしゃく)すべき事情」と考慮。部屋の閉鎖や師匠交代は免れた。

 ただ、委員待遇年寄だった伊勢ケ浜親方は、再雇用者の参与を除けば最下位の役職の年寄まで降格する。横綱経験者が平年寄に降格するのは2024年の前宮城野親方(元横綱・白鵬)以来だ。師匠は継続となるが、条件も付された。臨時理事会では部屋付き親方4人を含む5人で集団指導体制を取り、生活全般まで協力して指導や監督を行うことを求めた。伊勢ケ浜部屋は当面、協会や伊勢ケ浜一門の監督下に置かれ、一門の浅香山理事(元大関・魁皇)を中心に定期的に部屋の状況の確認も行われる。

 八角理事長(元横綱・北勝海)は臨時理事会で伊勢ケ浜親方に処分を言い渡した際、「師匠の自覚を持って、しっかりするように」と伝えたという。昨年1月に現役を引退し、同6月に伊勢ケ浜部屋を継承。3月の春場所の番付で全45部屋で最も多い31人の力士(関取7人)を指導する同親方は「こういう行動になってしまった自分をあらためて考え直して、今後、皆さんの信頼を取り戻せるように一生懸命頑張っていきます」と固く誓った。(林 直史)

 ◆協会の処分と指導内容の要旨

 ▽伊勢ケ浜親方 暴力禁止規程違反による委員待遇年寄から年寄への2階級降格、報酬減額(10%を3か月)

 ▽伯乃富士 泥酔状態で及んだ女性への不適切行為がコンプライアンス規程の「著しく品位を欠く行為」などに該当。理事長による厳重注意

 ▽伊勢ケ浜部屋 当面の間、協会と伊勢ケ浜一門の管理下に置き、定期的に状況を確認。部屋付き親方4人と師匠の伊勢ケ浜親方の5人で協力して集団指導体制を取り、稽古場のみならず、生活全般においても指導・監督を行うこととする

 ◆大相撲の主な暴行事案

 ▽07年6月 当時17歳の序ノ口力士が師匠・時津風親方(元小結・双津竜)や兄弟子3人から暴行を受け死亡。4人は傷害致死容疑で逮捕。

協会を解雇に

 ▽10年1月 横綱・朝青龍が泥酔して知人男性を暴行した問題で引退

 ▽17年10月 幕内・貴ノ岩が横綱・日馬富士に頭部などを殴られ負傷し、2場所連続休場。日馬富士は引退

 ▽20年7月 師匠・中川親方(元幕内・旭里)が3人の弟子に暴力。「殺すぞ」などの暴言も日常的で、部屋閉鎖と委員から平年寄への2階級降格

 ▽22年12月 伊勢ケ浜部屋で力士2人がちゃんこをかけるなどの暴力があったと被害者親族の電話相談により判明。加害者の1人は引退。報告を怠った師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は2階級降格

 ▽24年2月 宮城野部屋の幕内・北青鵬が2力士に対し、顔面、背中及び睾丸(こうがん)への平手打ち。財布に瞬間接着剤を塗布し、損壊。殺虫剤スプレーに点火してバーナー状にした炎を体へ近付けるなどの行為を日常的に繰り返されてきたことが発覚。北青鵬は引退。監督責任などで、師匠(元横綱・白鵬)を委員から年寄への2階級降格と、3か月の20%報酬減額処分。部屋は一門の伊勢ケ浜部屋への預かりに

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