◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 障害界の名手である石神深一騎手(43)の引退が今月8日に発表された。その前日には千葉・白井市のJRA競馬学校で入学式に参列。

次男・龍貴さんのジョッキーへの第一歩をしっかりと見届けていた。取材する間、その表情からは「引退」などという言葉はみじんも感じ取ることができず、“サイン”がなかったか、ただただ自問自答した。

 長男・深道も3年目を迎えたJRA騎手で、父も元騎手というまさに競馬一家。私は式を終えた石神深に龍貴さんにはどんな騎手になってほしいか聞いてみた。すると「活躍してほしいですよ」という言葉に続けて「深道を見ていて思うけど、同期は毎週のように重賞や特別レースに乗っています。毎週メインに乗れるような騎手になってほしい」。オジュウチョウサンやマイネルグロンなど多くの名馬の背中を知る男だからこそ、現状に満足してほしくない。辞めた後も2人にはどんどん高みを目指してほしい。ジョッキーの先輩としての父からの最後の叱咤激励(しったげきれい)の瞬間だったかもしれないと思い返した。

 障害ジョッキーのみならず、馬に携わる仕事は常に危険がつきまとう。石神深も胸椎や頸椎の後遺症が残っているだけに「大きなけがをしてしまう前に馬に乗れるうちに」舵を切ったと話す。第二のキャリアは開業2年目の柄崎調教師のもとで調教助手を務める。

5歳から、小学、中学も一緒に過ごした同い年の気心知れた同志だ。今後の目標は自身が何度も受賞したJRA賞を柄崎師にも「味わってもらうこと」。レジェンドはまだ夢を追い続ける。(中央競馬担当・石行 佑介)

 ◆石行 佑介(いしごう・ゆうすけ) 1998年入社。レイアウト担当を経て、2019年11月から中央競馬担当。直線が短いトリッキーなコースを予想するのが好き。

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