人気デュオ「コブクロ」が、メジャーデビュー25周年を迎えた。「桜」「蕾(つぼみ)」など誰もが一度は聴いたことがある名曲の数々を世に送り出し、昨年に開催された大阪・関西万博でもオフィシャルテーマソングを担当。

常に第一線で活躍し続けてきた。22日には新曲「霞日和/Starry Smile Story」(両A面)をリリースし、25日からは全国ツアーも開催する。2人の楽曲やライブに対する思い、目指すものについて迫った。(松下 大樹)

 時折、冗談を飛ばしながら、和やかに話を進めた小渕健太郎(49)と黒田俊介(49)。そんな2人の距離感はもちろん、音楽と向き合うスタンスも大きく変わることなくコブクロは節目を迎えた。

 小渕(以下、小)「最初の時から言っていた『自分たちで曲を作って良いと思うものをやろう』『楽しみ続けながらやろう』という道は、ちゃんと一歩ずつ歩んでるなと思います」

 2人の出会いは大阪・堺市の商店街。それぞれソロでストリートミュージシャンとして活動していた中、楽曲制作ができる人を探していた黒田が、「曲が書ける」と話す小渕を誘ってデュオを結成した。それ以来、絶やさず楽曲を生み出してきた小渕に、黒田は尊敬の言葉を並べる。

 黒田(以下、黒)「普通、(ネタが)枯れるとか言うじゃないですか。こいつは枯れる枯れへんとかいうカテゴリーで曲を作ってない感じがします。何かしら琴線に触れるエピソードを探してくる。やっぱ、すごいなって」

 小「僕は『作るぞ!』って思った日にできるようプログラミングされてるので(笑)。

ある方が言ってたんですけど、『(歌詞やメロディーが)降りてくるのを待ってたって降りてこない。そうじゃなくて自分で降ろせ』みたいな」

 黒「それができるのがプロ。僕、10年近く曲を書いてなくて全く降りてこない。いざ、曲を書かないといけないという時がこの10年で何回かあったんですけど、素通りしてきた。だから、僕はアマチュアなんです(笑)」

 そんな小渕が「コブクロがやってきたこと、音楽を通して伝えたいことが凝縮されたような楽曲」と胸を張る作品が、22日にリリースする「霞日和」。小渕が自身の経験を交えながら大切な人を失った悲しみや切なさから芽生える感情をバラードに落とし込んだ。

 小「悲しくてどこかに沈めてしまいたい記憶でも、『会いたいな』『もう一度会えるなら…』という思いが実は自分を前に動かしている気がしているんです。悲しい記憶を悲しいまま終わらせたくない、逆にそこを照らしてくれるようなものを書こうと思いました。黒田にデモテープを送ったら『また新しい表現がいっぱい出てる』って言ってもらいました」

 「霞日和」は辞書にも載っていない小渕の造語。その分、聴き手にどのように受け取ってもらえるか楽しみだという。

 小「聴いた人が思い浮かべる景色が正解。『これが霞日和』というものがないので、その人の中だけの景色をこの歌の中で描けることは、音楽ができる最大のマジックかなと」

 レコーディングの手応えも上々。

こん身の一曲が出来上がったといい、2人の表情にも充実感が漂う。

 小「黒田の歌声がゾクッとするような音質ですし、近くで聴いていて『一番気持ち良いな』という音源が録(と)れたことは最大の喜びですね」

 黒「今回、マイクの調子が良かったんですよ。10年前くらいにわざわざアメリカから取り寄せたマイクがあるんですけど、波があって最近はあんまり良くないことが多かった。別に何もメンテナンスしたわけじゃないのに、今回はバチーンってハマった」

 小「このマイクは10年前からこの曲を録るためにあったんちゃうか?というくらい良い音質で録れました。ピークがやっと来た!みたいな」

 黒「機械なんやから、ずっとええ感じでおれよ!って思いますけどね(笑)」

 25日からは同曲を引っさげたツアーを全国11か所で開催する。デビュー翌年以降、ツアーは活動休止明けだった2012年とコロナ禍の20年を除き毎年行ってきた。

 欠かさずステージに立っているため前のめりで取り組んできたのかと思いきや、2人の胸の内は少し異なる。ライブの話題になると、歯切れが少し悪くなった。

 黒「マジつらいっす。ベストを尽くしてもうまくいかへんのが僕らの世界。どうやったらうまいこといくか分からへん時ってあるんですよね。下準備だけはやるんですけど、うまくいったら楽しいツアーになるし、うまくいかへんことあったらつらいツアーになるし」

 小「完全に“モード”に持っていかないと、あの4、5か月を楽しみながら最終日を迎えられない。

いかにその日のベストを尽くせるかを毎日考えています」

 常に至極の形を目指している2人にとって、ステージ上の時間は一種の戦い。「つらい」という本音は、逃げることなく一つひとつのライブと真摯(しんし)に向き合っている証拠でもある。

 小「黒田と僕の声が重なり、バックバンドとコブクロが重なり、コブクロの全てとお客さんが重なるっていう一対一の究極をずっとやってる。全てが重なり合う一瞬を探して4、5か月もやってると思います。それが難しいんですけどね」

 コブクロには、結成した1998年9月8日から抱く大きなテーマがある。

 小「言わずしてですけど、とにかく日本一の2人組になりたいねっていう気持ちはありましたし、そこに向けてずっと音楽をやっているので」

 その高い志を胸に、01年のメジャーデビューから「YELL~エール~」「轍―わだち―」「桜」「蕾」など数々のヒット曲を連発。昨年に開催された大阪・関西万博でもオフィシャルテーマソング「この地球(ほし)の続きを」を手がけるなど、既に音楽史に残る存在であることは間違いない。

 それでも、満足感はまだなかった。

 黒「ちょっと足りない。そろそろ何かにたどり着かなあかん気がするんですよ。歌手として何か一個、自分の中で絶対的なものが見えてこなあかんなと思う年頃なんですよね」

 その“何か”を「言語化するのは難しい」と話すが、計8度のNHK紅白歌合戦出場や07年のレコード大賞受賞などの名誉とは全く別の、目には見えない感覚的なものを求めている。

 常に考えを巡らせる中、最近になって手がかりらしきものをつかみかけているという。

 黒「4月くらいに気づいたことがあるんですよ。それを実際に今回のツアーで体現して『ちょっと違うかったかな?』と思うのか、『ついに俺はたどり着いたぞ!』って思うのか確認しにいくと思います」

 2人の心が満たされるものは、そう簡単に手に入らない。自分たちで正真正銘の日本一になったと思える瞬間まで、コブクロの旅はまだまだ続く。

 ◆コブクロ 1998年5月、大阪・堺市の路上で会った小渕健太郎(こぶち・けんたろう)と黒田俊介(くろだ・しゅんすけ)によって同年9月8日に結成。名前の由来は2人の名字から。2001年3月22日、「YELL~エール~/Bell」(両A面)でメジャーデビュー。05年、NHK紅白歌合戦に初出場。以降、計8回出場。07年、「蕾」で日本レコード大賞を受賞。

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