マンションの屋上や建物の傍らに置かれているでかいタンク。「受水槽」あるいは「高架水槽」と呼ばれ、水道局から運ばれる生活用水をため、各戸へ給水するためのものだ。
2年間清掃せず、「垢まみれ」だったケースも
受水槽にまつわる「ヤバイ話」を教えてくれたのは、賃貸管理会社の担当者。実態を知らずに劣悪な環境の受水槽から引いた水を使っているかもしれない方々への注意喚起の意味も含め、匿名で実例を語ってくれた。
「まれにではありますが、長期間にわたり受水槽の清掃がなされていない話は耳にします。例えば、オーナーが自主管理している中古マンションで、2年間ずっと放置されていたケースがあったようです。高齢のご夫婦がオーナーだったんですが、ともに認知症になり管理がままならなくなったと聞きました。業務を引き継いだ息子さんが管理会社に依頼し、受水槽の清掃が忘れられていたことが発覚したのですが、住人の方は2年間掃除していない水を使っていたわけですから、飲んで具合が悪くなる人が出ていてもおかしくなかったと思います」
通常、10m3を超える受水槽は、水道法により年1回以上の清掃と定期点検が義務付けられている。10m3以下でも自治体ごとの管理基準に基づくメンテナンスが必要なのだが……
「1年間掃除をしないだけでも受水槽の中はかなり汚れています。また、なかにはホームレスの方が夏場のお風呂代わりに利用していて、あかまみれになっていたケースもあったとか。そこはマンション1階の駐車場奥に受水槽があったのですが、誰でも簡単に近づけるうえ、鍵もかかっていなかったので、ふたを開けて中に入り水浴びしていたようです。子どものいたずらなどもあり得るので、受水槽のふたには南京錠を設置しないと危ないのですが、時々施錠していないケースも見かけますね」
さらには、高架水槽のタンク内でカラスやねずみが死んでいたという話を聞くこともあったという。
近年は投資目的でマンションを購入する人も増えている。そのなかには、細かな点検や管理にルーズなオーナーも見受けられるようだ。
「投資目的のオーナーさんは、管理の知識をもっていないこともあります。知識がなくても管理会社に全て委託されていれば問題ありませんが、なかには家賃の回収や緊急対応だけを依頼し、その他に必要な管理義務については無頓着という方もいらっしゃいます。ですから、管理会社が入っているから100%安心と高をくくらず、どこまでの管理を委託しているのか知ることが重要だと思います。入居者の方も法律でどんな管理義務が定められているのか自分で調べ、心配であれば管理会社や大家さんに問い合わせてみるといいかもしれません」
なお、きちんと管理がなされているか否かは、1年に2回の「消防点検」がひとつの指標になるという。受水槽の検査と同じく共同住宅に義務付けられる法定点検で、有資格者が各戸を回り火災報知器の作動チェックなどを行う。室内に自動火災報知器があったり、バルコニーに避難ハッチや避難はしごがあれば、室内に立ち入って点検する必要がある。この訪問点検を受けた、または不在で受けられなかったとしてもチラシや張り紙で実施が告知されていたなら、しかるべき管理体制があり、受水槽の清掃・点検も適切に行われていると考えてよさそうだ。
ただし、単独でブザーが鳴る住宅用火災報知器には点検義務はなく、一戸建て賃貸あるいは共用の廊下や階段のない長屋タイプの賃貸住宅も消防点検の対象外となる。