35年などの長期間にわたり金利が固定される住宅ローンの【フラット35】。2025年4月から、中古住宅の新たな金利引き下げ制度「【フラット35】中古プラス」が始まった。

どういった制度なのか、利用しやすい制度かどうかなどについて、調べてみた。

【今週の住活トピック】
「新制度【フラット35】中古プラスがはじまります~令和7年度予算における制度拡充~/住宅金融支援機構

【フラット35】には当初一定期間の金利を引き下げる制度がいろいろある

【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している住宅ローンで、長期固定金利である点が大きな特徴だ。住宅金融支援機構という公的機関が関わっている住宅ローンなので、一定の品質が確保されていると認められた住宅でないと利用できない。

住宅ローンの変動型の金利が上がってきたとはいえ、まだ【フラット35】との金利差は大きい。しかし、【フラット35】には、当初一定期間の金利引き下げ制度がいろいろある。中古住宅で使えるものには、【フラット35】S、【フラット35】子育てプラス、【フラット35】維持保全型などがある。それぞれに適用条件があり、これらを組み合わせることで、金利引き下げ幅をより大きくすることができる。

2025年4月からは、中古住宅の場合に利用できる「中古プラス」という制度が追加された。

「【フラット35】中古プラス」とは?

「中古プラス」は、令和7年度予算の成立によるもので、既存住宅の品質確保・流通を促進することを目的に、住宅の劣化の検査(【画像1】)によって品質が確保された中古住宅を対象に、【フラット35】の金利が「当初5年間、年0.25%」引き下げられるものだ。

■【フラット35】中古プラスの物件検査内容

長期固定金利の住宅ローン【フラット35】、中古住宅に新たな金利引き下げ制度「中古プラス」が登場

【画像1】出典:住宅金融支援機構のフラット35サイト「【フラット35】中古プラス」より転載

組み合わせると金利引き下げ効果が大きくなる

さて、住宅金融支援機構のフラット35サイトには、金利引き下げ制度を組み合わせた場合の効果をシミュレーションしている(【画像2】参照)。「中古プラス」だけが利用できる場合は、当初5年間、年0.25%引き下げられることで、総返済額が約40万円減少する。さらに、【フラット35】S(金利Bプランの場合)と「子育てプラス」※(子ども1人の場合)も利用できる場合は、当初5年間、年0.75%引き下げられることで、総返済額が約120万円減少する。
※夫婦どちらかが40歳未満の若者夫婦か子どもが1人いる場合、当初5年間、年0.25%の金利引き下げ、子どもの数が増えるごとにさらに年0.25%ずつ引き下げ幅が拡大

なお、当初の金利が低い分だけ元金の返済が進むので、当初5年間の毎月返済額だけでなく、6年目以降の毎月返済額も、金利引き下げのない【フラット35】より少なくなる。

■金利引下げメニューの組み合わせパターン

長期固定金利の住宅ローン【フラット35】、中古住宅に新たな金利引き下げ制度「中古プラス」が登場

【画像2】出典:住宅金融支援機構のフラット35サイト「【フラット35】中古プラス」を基に作成

ちなみに、年1.80%で試算しているが、2025年4月の新機構団体信用生命保険付きの【フラット35】融資率9割以下の最も多い金利は、年1.94%だ。

検査のプロに聞いた!中古プラスの検査基準は厳しい?厳しくない?

さて、制度の概要はわかったが、実際に利用しようと思ったときに、簡単に利用できるものなのだろうか?検査のプロ、さくら事務所のホームインスペクター 友田雄俊さんに聞いてみた。

まず、住宅が【フラット35】の中古住宅の技術基準に適合する必要がある。検査機関または適合証明技術者が物件検査をして、基準に適合すれば「適合証明書」が発行される。品質面では、耐久性(耐火性含む)や耐震性、劣化状況などの技術基準があり、それらの基準すべてに適合して初めて【フラット35】が利用できる。なお、補修して適合するようになれば、「適合証明書」が発行される。

【フラット35】が利用できる中古住宅であることに加え、「中古プラス」を利用する場合は、さらに劣化状況に関する上記の【画像1】の検査内容が加わる。この検査基準はかなり厳しいものなのだろうか?

友田さんによると、劣化状況の検査内容は、マンションと一戸建てで異なり、マンションでは【フラット35】の基準が共用部分を検査するものであるのに対して、「中古プラス」は専有部分の住戸の中にも及ぶため、検査の範囲が広がるというが、基準自体は厳しいというほどではないとのこと。

一方、一戸建てではむしろ、【フラット35】の劣化基準のほうが項目は多く、すべてに適合するのが厳しいという。例えば、「シーリング材の破断・欠損がないこと」という項目があるが、シーリング材は建築後5年も経過すると徐々に劣化していくので、適切に補修がなされていないと適合しない状況になりがち。ベースとなる【フラット35】の基準に適合すれば、「中古プラス」は基準が厳しすぎて利用できないというほどではないようだ。

また、友田さんは、「【フラット35】中古プラス」と「【フラット35】維持保全型のインスペクション実施住宅」の併用ができないことを注意点に挙げる。「インスペクション実施住宅」とは、既存住宅状況調査(インスペクション)を実施済みで、劣化や不具合が認められない住宅だ。

4月からは、「維持保全型のインスペクション実施住宅」か「中古プラス」かを選択することになる。

なお、「中古プラス」が劣化状態を見るのに対して、【フラット35】Sの中古住宅の技術基準は、省エネルギー性やバリアフリー性といった住宅の性能を見るもの、「維持保全型」は維持保全や維持管理に関する配慮を見るものなど、それぞれで観点が異なるので、買おうとする中古住宅を多面的に確認するとよいだろう。

住宅ローンの金利が上昇局面に入り、全期間金利を固定できる【フラット35】に関心を持つ人もいるだろう。4月時点では、金利が上昇したとはいえ、まだ変動型の金利が低水準にあるが、【フラット35】の金利引き下げ制度を組み合わせることができれば、適用される金利を低くできる。どういった金利引き下げ制度があるのかは、あらかじめ知っておくとよいだろう。

●関連サイト
住宅金融支援機構「新制度【フラット35】中古プラスがはじまります~令和7年度予算における制度拡充~」
「【フラット35】中古プラス」のサイト

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