2025年、リクルートが2年ぶりに「SUUMO住みたい街ランキング2025」の愛知県版を発表。再開発や再整備により、注目の施設の開業やリニューアルが続く愛知。
2025年「住みたい街(駅)」1位は、大型再開発計画が控える「名古屋」


SUUMO住みたい街ランキング2025 愛知県版 調査報告書より(出典:リクルート)
今回の「住みたい街」(自治体・駅)ランキングは、愛知県内の街(自治体・駅)について、愛知県在住の20~49歳の男女2000人にアンケートを実施した結果をランキングしたもの。
県内居住者から見て、住んでみたいと思われている憧れの街がランクインしているといえる。
不動の駅1位は、2018年のランキングから変わらず「名古屋」が連覇!JR、名鉄、近鉄、地下鉄の9路線が乗り入れる総合駅「名古屋」の高い人気は、リニア開業を見据えて、駅前の再開発が進んでいることが挙げられる。2025年5月、名古屋鉄道らは名古屋駅前一帯の再開発計画の事業化を発表。現在の名鉄百貨店から日本生命笹島ビルまでの敷地面積約3万2700m2のエリアに、商業施設やオフィス、ホテルなどを含む高層ビル2棟が建設される。太閤通をまたぐ南北約400mが空中通路で一続きになる予定だ。
この再開発計画と連携し、名古屋市では地下公共空間や駅前空間の整備を進め、交通機関の乗り換え動線の利便性を向上する予定。官民一体の開発による「スーパーターミナル化」に期待が高まる。

名古屋駅地区再開発計画が発表されたエリア。「名鉄百貨店本店」や「近鉄パッセ」は2026年2月に閉店し、2棟の高層ビルが誕生予定(写真/PIXTA)
また、2025年春から夏にかけて「タカシマヤ ゲートタワーモール」に新ショップが誕生。2月に東海地区初となるヘア&スキンケアブランド「track」がオープンしたのを皮切りに、8月には「ブルーボトルコーヒー」中部エリア2号店も開業するので楽しみ。
1~5位までが前回と同じ結果に。各街が暮らしやすくバージョンアップ
それでは、2位以下のランキング上位の街についても見ていこう。5位までが、前回2023年に実施したときと同じという結果になった。
2位「金山」は「名古屋」の隣の街で、「住みたい自治体ランキング」1位の名古屋市中区と8位の名古屋市熱田区の間に位置する。金山駅はJR2路線と名鉄線、地下鉄2路線が乗り入れる総合駅で、交通利便性の良さに高い支持が集まる。名鉄線は刈谷市や三河方面へも運行し、豊田や岡崎方面にも通勤がしやすいほか、中部国際空港 セントレアとの直行便「ミュースカイ」も発着する。2024年、駅構内に「こだわりの食」をテーマにしたデリ&お土産店「プレシャスデリ&ギフト金山」がオープン。名古屋の老舗駅弁屋「松浦商店」のお弁当や惣菜などのほか、名古屋の名店の和洋菓子と、全国の銘菓やご当地お菓子を調達できる。名古屋市では「金山駅周辺まちづくり計画」を発表しており、駅北口にある商業施設「アスナル金山」は2028年春ごろに閉鎖し、今後は新たな複合施設を建設予定。併せて、2028年3月末までに「Niterra日本特殊陶業市民会館」を閉館して建て替え、新たな劇場を整備する方針だ。

金山駅構内は、「ミュープラット金山」や「プレシャスデリ&ギフト金山」などの商業施設が充実(写真/PIXTA)
名古屋市外からランクインした3位「豊橋」は、愛知県の南東部に位置する東三河の中心都市で、東海道新幹線が停車する。市内の移動には「市電」の愛称で親しまれる路面電車が活躍している。自然に恵まれ農業が盛んな地域で、市町村ごとの農業産出額では全国トップクラス。

食・健康・学びをテーマにした複合施設「em CAMPUS」。東館の外には「豊橋市まちなか広場」があり、イベントなども開催される(写真/PIXTA)
4位「栄」は、「住みたい自治体ランキング」1位の名古屋市中区に位置。再開発が続き、2024年に中日ビルが全面リニューアルし、93店舗が新規開業した。7階には街を一望するテラスもあり、近隣のオフィスで働く人をはじめ住民の憩いの場になっている。また、2026年夏ごろには栄交差点付近に地上41階、地下4階の高層ビル「ザ・ランドマーク名古屋栄」が開業予定。

栄交差点付近では高層ビルの建設が進んでいる(写真/PIXTA)
「住みたい沿線ランキング」では地下鉄東山線沿線の街が人気

SUUMO住みたい街ランキング2025 愛知県版 調査報告書より(出典:リクルート)
ここで、「住みたい沿線ランキング」にも注目してみよう。「名鉄名古屋本線」は2023年の3位から2ランクアップして、2020年以降初めての1位。「豊橋」と「名鉄岐阜」駅間を結び、「名鉄名古屋」を通る名鉄の基幹路線だ。「名鉄名古屋」は今後の名古屋駅地区再開発計画により、「中部国際空港とのアクセス強化」「他の交通モードやまちとのつながりの強化」「安全性の更なる向上」を重視して、より便利でわかりやすく、安全な駅となることを目指す。2位の「JR東海道本線」は東京駅から神戸駅までを結ぶ。3位は地下鉄東山線。今回の「住みたい街」ランキングで10位以内に入った名古屋市内にある街は、「金山」以外すべて地下鉄東山線が通っている。東山線は名古屋市で最初に開業した地下鉄路線で、市内を東西に横断し、1位の「名古屋」にも直通。4位の地下鉄名城線は、日本で唯一の地下鉄の環状線だ。

「名鉄名古屋」や「金山」から中部国際空港 セントレアへ直行するミュースカイ。空港線開業と2000系デビュー20周年を記念して「ブルーミュースカイ」が登場(写真/PIXTA)
前回からランクアップした「岡崎」「名鉄一宮」「千種」をチェック!
10位圏内では前回と同じ順位の街が多い中、今回ランクアップしたのは6位「岡崎」、9位「名鉄一宮」、10位「千種」の3つの街。
まず、6位の「岡崎」は前回9位からランクアップし、名古屋市外で最高位の6位に。2018年の調査開始以来、少しずつ順位を上げている。 2025年4月から駅東口で複合商業施設の建設が進み、2026年春の開業を予定している。駅のペデストリアンデッキと接続する3階建ての建物に、飲食や物販、医療などの9店舗が入る予定だ。「街の魅力(住みたい理由)」でも「今後、街が発展しそう」の項目で2位に選ばれているように、再開発により街が便利で賑やかに変化している。
岡崎市は「住みたい自治体ランキング」4位。愛知県の西三河地域に位置する徳川家康公生誕の地で、近年は人気YouTuber『東海オンエア』の“聖地”としても知られる。市街地の真ん中を一級河川「乙川(おとがわ)」が流れる街で、特に岡崎城のそばを乙川が流れるエリアは「QURUWA(くるわ)」と名付けられている。このエリアの活性化のためのプロジェクト「QURUWA戦略」は、2023年度にグッドデザイン金賞を受賞した。
「岡崎」は「街の魅力(住みたい理由)」では「魅力的な文化・娯楽施設が充実している」の項目で8位に。「岡崎城公園」には天守閣が再現され、周辺に史跡も多く残る。

「乙川リバーフロント」のペデストリアンデッキ上には、2019年に騎馬像としては日本最大級の徳川家康公の銅像が設置された(写真撮影/本美安浩)
9位「名鉄一宮」は前回14位から10位圏内に。一宮市は名古屋と岐阜の中間に位置する街で、「名鉄一宮」から「名鉄名古屋」までは特急で15分、「名鉄岐阜」までは特急で13分。JR「尾張一宮」と並んだ一体的なターミナル駅となっていて、JR東海道本線と名鉄名古屋本線、名鉄尾西線の3路線が利用可能だ。駅構内には商業施設「μPLAT 一宮」があり、天候を気にせずグルメやショッピングを楽しむことができる。駅西口直結で親しまれていた「名鉄百貨店 一宮店」は2024年1月末に閉館し、2025年度中に店舗などを含む複合施設が開業する計画が進行。近隣住民が日常的に利用できる施設に生まれ変わる予定だ。
駅東側の複合文化施設「i-ビル」には子育て支援センターが入るほか、5~7階に、約46万冊の蔵書をそろえる一宮市立図書館の中央図書館(一宮市立中央図書館)もあり、駅の利用と合わせて本の貸出や返却ができる。「街の魅力(住みたい理由)」でも「魅力的な図書館施設がある」の項目で3位に選ばれている。
一宮市は江戸時代から由緒ある真清田神社を中心に発展。明治時代には木曽川の豊かな水とともに織物の町として栄え、戦後は紡績・繊維産業の中心地に。好景気の中、商談に喫茶店が多用されたことから、愛知県のモーニング文化発祥の地になったといわれる。昭和31年からは毎年7月に、本町商店街を中心に「おりもの感謝祭一宮七夕まつり」が開催されている。

「i-ビル」の愛称で親しまれる尾張一宮駅前ビルでは、ライブやワークショップなどのイベントも開催される(写真/PIXTA)
2018年からの調査で初の10位圏内入りした10位の「千種」は、住みたい自治体2位の「名古屋市千種区」と6位の「名古屋市東区」の境目に位置する立地。千種駅は、住みたい沿線3位の地下鉄東山線と5位のJR中央本線が接続する。徒歩5分の場所に地下鉄桜通線車道駅があり、近隣住民は計3路線が利用できることも大きなメリットだ。また、地下鉄千種駅構内には「スターバックスコーヒー 東山線千種駅店」やコンビニエンスストアがあり便利。 2020年にトイレと待合空間をリニューアルし、2022年には5番出入口を改修するなど、駅を使いやすく明るい雰囲気にバージョンアップしている。
駅前には飲食店などが並ぶほか予備校が集まり、広小路通を横断する歩道橋「河合塾 千種ビクトリーブリッジ」が街のシンボルの一つ。2024年に、駅徒歩約3分の千郷町交差点角にスーパーマーケット「食生活ロピア千種店」が開店して大盛況に。同じ建物内にドラッグストアや100円均一ショップ、スポーツジムもオープンし、住む街としての利便性が大きく向上した。また現在は、駅徒歩約1分の東区葵3丁目の立地で新たにタワーマンション建設の計画が進み、今後も住民が増えるなどにぎわいが増しそうだ。

地下鉄千種駅出入口付近の様子(写真/PIXTA)
1位から5位までが2023年と同じ順位で、進化し続ける街の根強い人気が見えた今回のランキング。
7位の「星ヶ丘」でも、今年2月から「星が丘ボウル」跡地の再開発が始まり、人気の商業施設「星が丘テラス」の増床と椙山女学園大学の施設新設などが進んでいる。
学生時代に10位の「千種」経由で通学していた筆者。予備校とオフィスビルが並ぶ「千種」にスーパー「ロピア」ができたので、最近また訪れている。駅前の立地でありながら駐車場付き店舗というのも、車社会の県民にはうれしいポイント!
みんなの声を集めた「住みたい街ランキング」。上位の街は再整備などで年々住みやすさが向上している印象だ。なかでも10位圏内の街は、利便性はもちろん、文化や歴史、自然などに魅力があり、暮らしの中で楽しみを増やすことができそうだと感じた。今後も、変わり続ける愛知の街にアンテナを張っていたい。
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