2025年7月30日に、新団体「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」の発足式が開催された。といっても、団体の名称だけでは、何をするどんな団体なのかわかりづらいだろう。
【今週の住活トピック】
新団体「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」発足
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」とは?
まず、「タスクフォース」とは何か説明しておこう。タスクフォースは、特定の緊急課題を解決するために、一時的に編成される組織やチームのこと。今回でいえば、“特定の緊急課題”とは、既存住宅の断熱・省エネリフォームの普及拡大で、“一時的に編成される組織やチーム”とは、発足時で住友不動産(代表事業者)、三協立山、JBN・全国工務店協会(以下JBN)、住宅開口部グリーン化推進協議会(以下AGW)、住友不動産ハウジング、LIXIL、YKK AP(代表事業者以外50音順)となる。
次に、「既存住宅の断熱・省エネリフォームの認知・普及拡大」がなぜ緊急課題なのか?
“新築住宅”では、すでに2025年4月から現行の省エネ基準の適合が義務化されている。一方、ストックされた“既存住宅”では、全体の18%しか現行の省エネ基準を満たしていない。なおかつ、24%(推計約1300万戸)に至っては、無断熱の状態といえるほど断熱性が低い。

出典:国土交通省 令和6年度住宅経済関連データ
こうした状況でありながら、断熱・省エネリフォームのメリットなどが認知されていないこと、リフォーム工事費用の負担が大きいことのほか、断熱・省エネリフォームを施工できる事業者が限られることなどのさまざまな課題が存在する。これらの課題を3つの分科会で連携して解消に当たろうというのが、今回のタスクフォースなのだ。

出典:発足式のスライド資料より転載
具体的には、次のような連携になる。
(1)消費者向け認知拡大分科会(住友不動産・三協立山・住友不動産ハウジング・LIXIL・YKK AP)
→ 消費者に断熱・省エネリフォームの価値を広く伝える
(2)営業力強化分科会(AGW)
→ 断熱・省エネリフォームを生活者に的確に提案できるように営業担当者のスキル向上などに取り組む
(3)技術力強化分科会(JBN)
→ 断熱・省エネリフォームを施工できる事業者をマニュアルなどの支援により増やす
分科会は、ほかの会社や団体にも参加を広げていく予定で、各自治体とも連携を図っていく。
環境省も「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」を支援
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」は、環境省の「デコ活」の補助金の採択事業になっている。「デコ活」とは、脱炭素(Decarbonization)と環境に良いエコ(Eco)を含む“デコ”と活動・生活を組み合わせた新しい言葉で、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動のことだという。環境省のデコ活の対象は、住宅に限ったものではなく、衣移食職住など多岐にわたっている。
わが国は、2050年までに温室効果ガスの排出量を差し引きゼロにするという目標(2050年カーボンニュートラル)を立て、5年後の2030年度には温室効果ガスを2013年度比で46%削減するとしている。この高い目標を達成するためには、家庭における削減が不可欠で、とりわけCO2排出量の4分の1を占める「冷房・暖房」の削減が重要だ。
発足式に出席した環境省の杉井威夫さんは、特に開口部の省エネ化は、冷暖房の効きを良くし、電気代あるいは光熱費全体を削減し、暮らしを守るだけでなく、連日猛暑が続くなかで熱中症などから命を守るメリットもあると強調した。そのうえで、断熱・省エネリフォームで利用できる「先進的窓リノベ2025事業」などの補助金の活用も促した。
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」の今後の活動
「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」では、初年度は主に普及啓発に取り組む計画だ。スローガンを「家族の幸せ まずは断熱」と定め、あったかいねぇこ・すずしいにゃ~この猫キャラを活用し、8月に特設サイトを公開、10月以降に東京からスタートして全国に体験型イベントなどを開催していく予定だ。

出典:新団体「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」発足のニュースリリースより転載
発足式では、タスクフォースに参加する事業者の代表者からも、「猛暑・酷暑など自然の気候変動に生活空間がついてきていない」(三協立山)、「熱中症は室内で発生する事例が多い。窓リフォームの補助金の認知度も低いが、少ない予算でも住生活を改善できる」(LIXIL)、「断熱・省エネリフォームは目に見えづらいので、その効果がわかりづらい。断熱・省エネリフォームのベネフィットをしっかり提案したい」(YKK AP)といった声が挙がっていた。
発足式当日の会場のある新宿区の気温は34℃。この日は、兵庫県丹波市で日本歴代最高の41.2℃を記録した。連日猛暑酷暑が続き、外出を控える人も増えている。
筆者も以前に自宅の窓まわりの省エネリフォームを行ったが、筆者の場合は、冬に窓のそばでひんやりした空気に触れることもなくなり、窓の結露トラブルからも解放されたことを評価している。夏場だけでなく、通年で住環境が改善される点も見逃せない。今後のタスクフォースの活動に注目していきたい。
●関連サイト
新団体「断熱・省エネリフォーム推進タスクフォース」発足(ニュースリリース)
環境省「デコ活」サイト