2024年4月、ファッション・ポップカルチャーの発信地である原宿に、東急不動産が開発を行った新しい商業施設「ハラカド」が開業しました。地下1階には、高円寺(東京都杉並区)の街で90年以上にわたり銭湯を営んできた「小杉湯」の2号店、「小杉湯原宿」が入居しています。

オープンから1年半、どのような変化があったのでしょうか。最新の商業施設と昔ながらの銭湯がコラボレーションする、商業を通じた新たなまちづくりのあり方を取材しました。

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

ハラカド外観。段上に連なる屋上庭園が特徴的な建物は、建築家・平田晃久氏による設計(写真/ロンロ・ボナペティ)

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

小杉湯原宿へ向かう入口に掲げられたのれん(写真/ロンロ・ボナペティ)

ケの日のハレをつくる。小杉湯が変わらず守り続けるもの

高円寺にある小杉湯は1933年に創業し、その建物は現在国の登録有形文化財にも登録されています。2016年には当時36歳だった3代目平松祐介(ひらまつ・ゆうすけ)氏に引き継がれました。関東大震災の復興期につくられた銭湯の特徴である宮造りと呼ばれる趣のある建物と、レトロで清潔な浴室空間が若い世代にも受け入れられ、平日で500~600人、土日祝で900~1100人が訪れる人気施設となり注目を集めてきました。

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

高円寺の商店街と住宅地の間に立つ小杉湯(写真提供/株式会社ゆあそび)

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

小杉湯内部。高い吹き抜けと明るい空間が人気(写真提供/株式会社ゆあそび)

商店街の外れに位置していることもあり、町内のお店と連携しスタンプラリーを実施する取り組みや、過去にはクリエイターが出演するイベントが行われることもありました。また常連客が中心となった「株式会社銭湯ぐらし」が運営を行う、銭湯付き会員制シェアスペース「小杉湯となり」など、銭湯を核とした他業種との連携は、ひとつの施設で体験を完結させない、街に広がる関係性づくりの可能性としても注目されてきました。

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小杉湯と隣接する「小杉湯となり」(写真提供/株式会社ゆあそび)

このような、「メディアとしての銭湯」ともいえるような活動も、「イベントをするから人が集まる」のではなく、「人が集まるからイベントが生まれる」という関係性のうえに成り立っているというのが平松氏の考え方。小杉湯では「ケの日のハレ」をキーワードに、日常に溶け込んだささいな幸せを目指して場づくりに取り組んできました。


原宿に新規出店するにあたり、大切にしたのは銭湯らしさを感じることのできる空間づくり。空間デザインはT/H(ティーエイチ)建築設計事務所が務め、高円寺の小杉湯を参考にしながら、銭湯らしい場づくりを意識しました。

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小杉湯原宿の浴室内部(女湯)。タイルで覆われた床壁と、明るく照らされた天井との対比は、高円寺の小杉湯の特徴を引き継いでいる(写真提供/株式会社ゆあそび)

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浴室内部(男湯)。あつ湯、ミルク風呂、水風呂の3槽で構成されている(写真提供/株式会社ゆあそび)

また壁に描かれたペンキ絵は、高円寺のペンキ絵も手掛けた、日本に3人しかいないという銭湯絵師である中島盛夫氏によるもの。男女向かい合わせとなった絵は、同じ富士山を反対の角度から描いたものとなっています。カランや洗いおけといった小物類や、木や畳を用いた脱衣所も、銭湯らしさを構成する重要な要素となっています。このような材料選びは、メンテナンスフリーをうたう化学製品と比べると手のかかるものですが、毎日2度、夜間と早朝の清掃と週に1度の点検を通じて清潔な状態を保つよう管理が徹底されています。

また常に目配りを欠かさぬよう、勤務時間中の入浴がスタッフへの福利厚生として認められているというのも驚きです。常連客との裸の付き合いは、場づくりにとっても重要な側面があるのだそう。

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小杉湯原宿の脱衣所。生木の床やロッカーが銭湯らしい雰囲気を生み出している(写真提供/株式会社ゆあそび)

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畳を用いたベンチ(写真/ロンロ・ボナペティ)

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銭湯でしか見ることのない、コイン式のドライヤー(写真/ロンロ・ボナペティ)

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男女の浴室ごとに描き分けられたキャラクター。

細かなサインにもこだわりが行き届いている(写真/ロンロ・ボナペティ)

「私たちが目指しているのは、銭湯文化を世に残していくことです。その想いを共有するメンバーが、小杉湯原宿には集まっています」
そう話すのは、株式会社ゆあそびの長井晶(ながい・あきら)さん。ゆあそびは小杉湯原宿の運営会社で、長井さんは番台を務めています。

小杉湯原宿で働くメンバーの多くは高円寺の小杉湯にほれ込んだ方々です。原宿での開業にあたっては、早朝(7時)から営業準備に対応できるよう、近隣に引越してきた方もいるのだそう。
銭湯文化に魅力を感じるからこそ、銭湯が失われつつある現状に強い問題意識があるといいます。

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番台に座る長井晶さん(写真/ロンロ・ボナペティ)

現状維持では残せない。小杉湯が挑戦するビジネスのかたち

銭湯は、江戸時代から都市の文化として根付いてきました。それまでの共同浴場は少量のお湯でたく蒸し風呂が中心でしたが、江戸時代に上下水道が整備されたことでたっぷりのお湯に浸かる現在の形式が生まれました。街に銭湯があることで、人口が集中した都市環境においても公衆衛生が確保され、都市の発展に寄与したと言われています。
明治期以降も都市の重要なライフラインとして発展した銭湯は、さまざまな立場の人びとの交流の場となる、公共空間としての役割も担ってきました。第二次世界大戦以降も風呂なしの共同住宅の建設が続き、1960年代末には東京都内におよそ2700軒の銭湯があったことが確認されています(※『東京の批判地誌学』ナカニシヤ出版)。


しかし各住宅に風呂場が普及していくに連れてその数は減り、2021年には481軒にまで減少※しました。

銭湯が生活に必須なものではなくなっていくなかで、さまざまな人が集まる場であるという特性を活かし、イベントなどを通じて新たな需要を模索してきた小杉湯も、高円寺での収益だけでは長期の見通しが立てられなかったのだそう。背景には、銭湯に関わる制度の問題もあります。小杉湯は行政が定める「一般公衆浴場」にあたり、公衆衛生を目的として行政からの補助を受ける代わりに、都道府県ごとに入浴料金の上限が定められるなどの制限もあります。エネルギー価格上昇のあおりもあるなか、入浴料を上げずにサービスの質を維持していくだけでも困難なことは容易に想像がつきます。

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小杉湯の脱衣所。歴史ある建物が昔ながらの銭湯の雰囲気をつくっている(写真提供/株式会社ゆあそび)

「小杉湯の建物を100年先も残していくための修繕費が、高円寺での売り上げだけでは賄えない状況があるなかで、東急不動産さんから原宿での出店のお声がかかりました」(長井さん)

小杉湯が銭湯というビジネスモデルの継続に危機感を覚えていたのと同様、東急不動産にとっても商業施設のあり方に対する再考を迫られていました。ハラカドのオープンに向けてテナントを募集するリーシング期間は、ちょうどコロナ禍と重なったこともあり、当初の想定通りには進みませんでした。ファッション業界においても、WEBでのマーケティングが中心となり、リアル店舗が衰退していくことも予想される状況でした。

しかしながら不動産運用を通じてまちづくりを行う東急不動産にとっては、リアルな場でのコミュニケーションを促進する、コミュニティスペースとしての機能が商業施設に必要となります。そこで都心の商業施設にあえて銭湯を入れることで、日常的に町や人に愛される施設を目指すという発想から、小杉湯に白羽の矢が立てられることとなりました。

東急不動産が掲げる、街を半径2.5kmの「面」で捉える「広域渋谷圏」という考え方は、小杉湯が高円寺の街で実践してきた街との関わり方とも通じるものでした。

小杉湯の入浴客の大半は、徒歩なら半径500m、自転車なら半径2km圏内の距離感で、概ね広域渋谷圏の距離感と重なります。またハラカドが立つ場所には、かつて「原宿セントラルアパート」があり、新進気鋭の写真家やデザイナーなどクリエイターが集い、1960年代から80年代にかけて原宿の文化の中心地だったそう。その跡を継ぐハラカドと、小杉湯のメディアとしての銭湯というあり方には、やはり通じ合うものがありました。

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

小杉湯の建物は、高円寺の町並みの重要な要素のひとつにもなっている(写真提供/株式会社ゆあそび)

このようにして始まった両者の協業でしたが、ディベロッパーとして商業施設ハラカドの成功が至上命題である東急不動産と、街の銭湯である小杉湯との間では、当初は思いがすれ違うこともあったそう。しかし互いに譲れない部分をひとつひとつ納得するかたちにまとめていきました。

「スーパー銭湯やサウナ付き施設など、商業的な性格の強い施設では、そこだけでいろいろな体験ができることが価値となっています。しかし浴場だけの銭湯には、それらとは違う魅力があります。それは、お風呂に入る前後で街を体験できることです。
街とともにある銭湯が新しく生まれたことを周知するために、オープン後しばらくは入浴を近隣にお住まいの方限定としていました。そのおかげもあってか、誰でも入れるようにした現在でも、近隣にお住まいの常連のお客さまもたくさん来ていただいています。小杉湯原宿は一般公衆浴場には該当しないものの、日常的に通いやすい東京都の規定と同じ550円に設定しています」(長井)

現在、小杉湯原宿には近隣住民はもちろんのこと、原宿に買い物に来ている十代、二十代の若者や国内外からの観光客など、多種多様な人たちが来店しています。特に若い世代や海外の方にとっては初めての銭湯体験となることも多く、スタッフが丁寧にフォローしているそうです。

ハラカドで銭湯に触れ、また別の地域や地元の銭湯を訪れる習慣が生まれると、銭湯文化の継承への一歩となっていくことでしょう。

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オリジナルデザインの回数券。10枚入りで5000円のものと、12枚入りで6000円の花札入浴券が用意されている(写真/ロンロ・ボナペティ)

また原宿はより多くの人の目に触れる場所であることから、高円寺では実施してこなかった新しい取り組みも手掛けています。
「小杉湯原宿では、銭湯での新たなビジネスのあり方を探る挑戦も行っているんです」(長井)

銭湯を新たなつながりのハブとする仕掛け、チカイチパートナー

小杉湯原宿が入居するハラカドの地下1階は、「チカイチ」と名付けられた銭湯を中心とした街のような空間を意識してつくられています。“素に戻れる場所”を目指した「素のまま、そのまま」をコンセプトに、原宿の一等地でありながら、誰でも無料で自由に出入りでき、思い思いに過ごすことのできる場所となっています。少しの休憩でもカフェに入らなくてはならないような原宿の中心にあっては貴重なスペースです。

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チカイチの休憩スペース。寝転がって過ごせるよう、カーペットが敷かれている(写真/ロンロ・ボナペティ)

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パソコン作業も可能な畳スペース(写真/ロンロ・ボナペティ)

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ちゃぶ台の上には将棋やかるたのセットも(写真/ロンロ・ボナペティ)

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感想が寄せられているノート。銭湯での体験を楽しんでいる様子が伝わってくる(写真/ロンロ・ボナペティ)

Wi-Fiや電源も完備され、本棚にはスタッフが選書した漫画や書籍が並び、買い物客や制服を着た放課後の学生、仕事の合間のサラリーマンなどさまざまな人びとに好評を博しているそう。
けれどこのチカイチは、単なるフリースペースとして解放されている、というわけではありません。
「チカイチは、パートナーの企業様と一緒につくっていくスペースです。小杉湯原宿のことを好きでいてくださるお客様がいて、たくさんの人が集まる場所がある。

そこに可能性を感じてくださる企業様と契約を結び、双方にとってメリットになるような関係性をつくっています」(長井)

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スナックやドリンクを購入して、チカイチで飲食することもできるようになっている(写真/ロンロ・ボナペティ)

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ドリンクコーナーには、スタッフの出身地から仕入れた名産品も置かれている(写真/ロンロ・ボナペティ)

チカイチにはブースごとに、漢字一文字のサインが掲げられています。「星」のサインのブースはサッポロビール、「清」のサインは花王のブースと、一文字一社の契約になっています。
ビールスタンドではサッポロビールの黒ラベルを提供。また、銭湯内部のアメニティには花王製品が使われています。どちらもパートナー企業にとっては自社商品を体験してもらう機会となり、小杉湯原宿にとっては入浴前後のより良い体験がつくれるため、双方にとって利益となる関係性となっています。

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下町の路地空間のようなつくりのチカイチ。「清」の文字が花王のブースに掲げられている(写真/ロンロ・ボナペティ)

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花王の商品が陳列されたブース。花王の担当者が、小杉湯のタイル目地が清潔に保たれている様子に驚いたことがきっかけで縁がつながったそう(写真/ロンロ・ボナペティ)

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サッポロビールのブースでは、簡単なおつまみも提供している(写真/ロンロ・ボナペティ)

またチカイチ内部の壁面には、原宿で毎年行われている「原宿表参道元氣祭スーパーよさこい」を紹介するパネルも掲げられていました。こちらは東急不動産からの依頼を受けて実施しているものだそう。東急不動産としては街とのつながりを強固にするためにチカイチの場を活用し、小杉湯原宿としては日頃から街の人々に銭湯に来ていただけるよう、地域で大切にしているお祭りに協力しています。ただ単にイベントを紹介するだけでなく、よさこいの踊り子さんへの給水のボランティアなどに参加するスタッフもいるのだとか。こうした街との関係づくりは着実に実を結んでおり、スーパーよさこいの当日には踊り子さんがチカイチで休憩する姿も見られたそうです。

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スーパーよさこいを紹介するパネル展示(写真/ロンロ・ボナペティ)

こうした銭湯の可能性を広げ続ける小杉湯原宿ですが、目指すゴールはさらに先にあると長井さんは言います。
「賃料が高い場所なので今は企画やイベントが多く実施されていますが、いつかは平凡な銭湯が毎日続けていけるようにしたいです」
その根底には、やはり銭湯文化を未来に残していきたいという思いがあります。

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お土産コーナーには、風呂敷や入浴剤など、銭湯と関わりのあるグッズが並ぶ(写真/ロンロ・ボナペティ)

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人気のお土産だという、入浴剤。日替わりで小杉湯原宿でも使用しているもの(写真/ロンロ・ボナペティ)

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洗いおけや腰掛け台も、銭湯になくてはならないアイテム。銭湯文化の継承のためには、関連産業が継続していくことも重要(写真/ロンロ・ボナペティ)

チカイチパートナーの取り組みは、銭湯の新たなビジネスモデルとして期待できる一方で、原宿という特殊な条件だからこそ成立しているものであることも確か。同じ枠組みを地方都市など前提が異なる場所で展開することは難しいでしょう。

しかしながら、小杉湯原宿ではチカイチパートナーのほかにも、パートナー契約のかたちとは異なるコラボレーションも模索しています。日本放送のラジオ番組「オールナイトニッポンMUSIC10」への手紙投稿企画や、チカイチで利用できる「ヒツジのいらない枕」、テレビアニメ「らんま1/2」とのコラボ商品などがその一例。こうして見ると、銭湯という場所が関わり得るジャンルの幅広さに驚かされます。実際、地方の都市では大手企業とのパートナー契約は難しくとも、同じ町内にある企業やお店と双方にとってメリットのあるコラボレーションは実現可能なのではないでしょうか。

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

「オールナイトニッポンMUSIC10」の番組内で流れる曲のリクエストを紙に書いて投函するリクエストポスト。手書きのリクエストは採用率が高く、実際にここで書かれたリクエストも読まれているそう(写真/ロンロ・ボナペティ)

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「ヒツジのいらない枕」とのコラボレーションでは、実際にチカイチ内で商品を試用することができる(写真/ロンロ・ボナペティ)

老舗銭湯「小杉湯」、原宿”ハラカド”に進出から1年。高円寺から生まれた銭湯は、原宿カルチャーとどう融合している?

「らんま1/2」とのコラボ商品。小杉湯原宿のスタッフが宣材写真に登場している(写真/ロンロ・ボナペティ)

小杉湯が高円寺や原宿で力を入れているのは、一度薄れてしまった街との関わりを再びつなぎ合わせること。「ケの日のハレ」としての銭湯の魅力に可能性を感じ、関わりをもとうとする人たちが増えていくと、銭湯文化が100年先も続いていく未来が見えてくるのかもしれません。

その先鞭をつける小杉湯原宿へ、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
土日は混雑する時間もあるそうなので、平日がおすすめですよ。

●取材協力
小杉湯原宿
株式会社ゆあそび

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