夫婦ふたり暮らしでは十分と思っていた3LDKが、子どもの誕生・成長とともに手狭になるというのはよくある話。さらにリモートワークをする人が増えた昨今、「部屋数が足りない」問題に直面するケースもあるはず。

今回は、その解決法として「近所にワンルームを借りた」Yさん一家にインタビュー。物理的な課題解決だけでなく、「精神安定的にも良かった」理由とは?

本宅3LDKから徒歩3分の場所にワンルームを借りる

Yさんは、会社員の夫、高校生の息子、中学生の娘と東京都内で暮らす4人家族。夫婦ふたり暮らしの時に購入したのは72平米の3LDKだが、現在、そのマンションとは別に、徒歩3分の場所にワンルームマンションを借りている。
ここは、在宅ワークの妻の仕事場兼収納部屋。とはいえ、ベッドもあり、テレビもあり、小さな冷蔵庫もある。一見すると、よくある学生の一人暮らし部屋のようだ。

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

ワンルーム賃貸には、ベッドと机、洋服棚、テレビなどを置き、生活もできるように(写真撮影/片山貴博)

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

借りているワンルームの間取り(制作/SUUMOジャーナル編集部)

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

Yさんが“本宅”と呼ぶ3LDKのリビングの新築時の写真。「今はもう少しモノが増えました」(画像提供/本人)

きっかけは「24時間4人でステイホーム」は限界と感じたこと

ワンルームを借りようと思った直接のきっかけはコロナ禍。2020年3月、全国の学校が一斉に休校になった時だ。ほどなく夫も在宅勤務になった。「私はフリーランスのライターで、もともと家で仕事をしていました。当時、息子は小6、娘は小3で、いきなり4人が72平米3LDKに24時間家で過ごすことになったんです。あ、これは息苦しい、大変だ、って思いましたね」

当時は子どもたちの個室はなく、基本的にリビングで過ごしていた。宿題も遊びもそう。

夫婦がともに在宅になったにもかかわらず、個室がなく、オンライン会議などは唯一鍵のかかる寝室を時間がかぶらないようにして使う、といった具合だった。

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

当初、リビングの一画を仕事スペースにしていた(画像提供/本人)

もともとこの部屋は、20年前、夫婦ふたり暮らしの時に購入したもの。
リビングの奥の和室を狭くして、リビングをやや広げ、窓側の一画を仕事スペースに。北側にあった2部屋は、ひとつは夫婦の寝室、一部屋は収納部屋にしていた。
「のちに子どもが誕生し、夫婦の寝室を母子の寝室、リビング奥の和室を夫の寝室にしました。子どもがまだ小さいうちは、それで十分でした」

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本宅である3LDKの間取り(制作/SUUMOジャーナル編集部)

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

3LDKは、6畳の和室をリビングより一段上がった畳のスペースにリノベーション。子どもが生まれたあとは、夫の寝室に(画像提供/本人)

「上は男の子、下は女の子。いずれそれぞれの個室が必要になったらどうしようと思っていたものの、息子も娘も『自分の部屋がほしい!』という性格でもなく、そういった話が本人たちから出ることはありませんでした。でも、息子の中学入学を控えて、さすがにもう個室は必要だろうと。さらに、コロナ禍になり、ステイホームでいよいよ本当に部屋数が足りない!を痛感したんです」

思いのほか高かったトランクルーム料金。「だったら部屋を借りちゃおう」

「普通に考えたら、収納部屋になっていた部屋を片付け、そこを息子の個室にするのが良いですよね。ただ、夫婦とも着道楽で洋服が大量。

一部屋を大型収納にすることで、リビングをなんとかすっきり保てていたので、これをなくすのは難しい。そこで、当初はトランクルームを借りようと思ったんです」

幸いなことに、徒歩10分の場所にトランクルームがあった。
「ところが、思っていた以上に高かったんです。半年は半額キャンペーンなどがあったんですけど、4畳で約4万円。だったら、もうワンルームを借りるのはどうだろうって思ったんです。トランクルームと違い、ワンルームなら寝泊まりもできます」

トランクルームなら近所で1カ所だけだが、ワンルームとなれば選択肢豊富。最終的には、自宅から徒歩3分、家賃6万円(共益費込み)、18平米の物件を借りた。
「周辺相場からするとやや安いと思います。ただ駅前で周囲がにぎやかで、日当たりもさほどよくない。ずっと過ごす場所ではないので、まあ、いいかなぁと。仲介手数料、敷金、礼金、引越し費用と、新たに家具・家電も購入したので50万円弱はかかったでしょうか」

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

ベッドなど寝具とテレビは新しく購入。「当初はソファだけ置くつもりでしたが、結局寝泊まりも視野に入れるならとベッドを置きました」(写真撮影/片山貴博)

Yさんの場合、幸いなことに20年前に購入したマンションのローンは完済。

毎月の住居費は管理費・修繕積立金の3万円。ワンルームなら家賃を支払う余裕はあった。仕事部屋として借りるなら経費にすることもできる。
「いっそワンルームマンションを購入してしまおうかな、とも思ったこともありました。家賃は消えてしまうけれど、持ち家マンションなら、いずれ賃貸にまわして家賃収入を得ることも可能だったからです。ただ、同条件なら物件価格は約2000万円程度。さすがに現金一括では支払えないし、半額を現金、もう半額をローンで組むとして、15年以上かかる計算に。確かに資産になることは良かったのですが、これから子どもの教育費が上がる、いう時期で、預貯金が減ってしまうことも怖かったんです。仲介手数料含め諸費用もばかにならない。ローンを完済するころの15年後なら、子どもたちが独立し、また夫婦ふたり暮らしになるわけですから、とりあえず賃貸でいいかなと思いました」

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

3LDKの北側の一室は収納部屋だったが、ここにあったものはほとんど借りたワンルームに運んだことで、息子の個室に(画像提供/本人)

収納&仕事部屋以外にも使い方はいろいろ

ワンルーム(別宅)はYさんの洋服や仕事の資料などの物置部屋と仕事部屋を兼ねている。日中は基本的に本宅で仕事をしているけれど、午後、子どもが帰宅後は仕事に集中できなくなるため別宅に移動する。土日に仕事があるときも別宅へ。現在は時々、在宅勤務時に夫が使うこともある。

さらに、仕事部屋以外にも、別邸は+αとしての使い方もある。
「1~2人のママ友との飲み会の場所にしたり、姉が遊びに来た時はここに泊まってもらいました」

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夫婦の洋服がずらり。「季節の変わり目には衣替えで何度も往復することになるのが少し大変ですね」(写真撮影/片山貴博)

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

ガスは通していない。風呂は使わないのでスーツケース置き場に(写真撮影/片山貴博)

「大人だってひとりになれる空間、時間が必要」と実感

当初は、物理的に必要になった「もう一部屋」だが、コロナ禍が落ち着いた今も精神的にも助かっているそう。
「お母さんって、自分の部屋がないことが多いんじゃないでしょうか。どうしてもひとりでいたいときに、別宅でひとりの時間を過ごすことが良い気分転換になっています」

ワンルームを借りて4年経過し、使い方もルーティン化してきた。
「基本的にインドア派なわが家族。休日に出かけることもあまりありません。子どもたちも思春期になり、当然、ひとりの時間が必要です。となると、リビングが私の居場所になるんですけど、正直夫とふたりでリビングにいるのが、どうも気詰まりで。別に仲が悪いわけでも、会話がないわけじゃないけれど、夫は夫でスポーツ観戦したいし、私は私で韓国ドラマを観たい。そんなときに、お互いが“ちょっとしたひとり時間”を別宅で過ごすのが習慣になりました。

特に、毎週土曜日の夜は夫が別宅で過ごすことがルーティンになり、私は毎週土曜日の本宅のリビングを独り占め。配信ドラマや映画を一気見したりして、ひとり時間を満喫しています」

3年前、娘が中学生になるタイミングで、リビングの一画に引き戸を付けるリフォームをし、娘の個室に。
「とはいえ、狭いので私と寝室を一緒に使っています。寝室にはテレビがあるので、結局娘は、個室と寝室の両方を使っている感じ。本当は息子が大学生になるタイミングで、別宅を息子の部屋に、息子の部屋を娘に、とスライドしようと思っていたんですけど、息子が“移動するのは面倒だから別にこのままでいい”というので、これからどうしようか検討中です」

子育て4人家族「部屋が足りない」を“近所のワンルーム賃貸”で乗り切る! 3LDK自宅マンションの+α「家拡張アイデア」

3LDKのリビング。以前、仕事スペースがあった窓側の場所は、壁と引き戸を造作工事し、娘の個室に(画像提供/本人)

物件価格が上がっているとはいえ、子どもの成長やライフスタイルの変化によって、現在の住まいが手狭になるのはよくあること。そんなとき、ワンルーム賃貸を借りて、マイホームを拡張していくのはひとつの選択肢かもしれない。

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